本県復興住宅、共益費が高騰 入居率低下地域の住民「もう限界」

 
共益費の高騰などに悩む鈴木さん。入居率の低下が住民の負担になってきている=会津若松市

 東日本大震災後に整備された福島県営復興公営住宅の一部で、入居者が負担する共益費が高騰している。共用スペースの電気代などが上昇する一方、震災12年を過ぎて入居率は低下し続けているためだ。自治会は被災者以外も住めるよう入居要件の緩和を求めているが、県は慎重姿勢を示す。管理開始から10年間受けられる家賃減額措置も段階的に縮小され、住民は不安を強めている。

 「ようやく新しいつながりができてきた。住み続けたいが、退去を考えざるを得ない」。大熊町から避難を続ける鈴木幸子さん(75)は、集会所で心境を打ち明けた。会津若松市の年貢町団地1号棟で自治会役員を務めている。

 4月から1万円に、冬場は5000円上乗せ

 2016年7月の入居時に月6千円だった共益費は、4月から1万円に上がった。共益費は共用スペースの光熱水費や設備維持費を各世帯で割る仕組み。18年のピーク時に39世帯いた入居者は、この1年だけで7世帯が退去し、22世帯まで減った。

 除雪や凍結対策が必要になる地域事情も相まって、冬場は月5千円が上乗せされる。負担総額は他の復興公営住宅の入居者から驚かれるほど高い。県によると、県営復興住宅入居者の8割は月収8万円以下。家賃減額措置の対象になるが、この特例も管理開始6年目から段階的に縮小され、容赦なく追い打ちをかけている。自治会は1年前から入居要件の緩和を求めているという。

 鈴木さんは「住民全員で共益費を削る努力をしているが、もう限界だ。一般県民を受け入れる復興住宅もあるのだから、県は早急に対応してほしい」と訴えた。

 県も「空き戸増加は課題と認識」

 県営復興公営住宅について、県は基本的に被災者以外の入居を認めていない。3月までに県と市町村が整備した4752戸のうち、92%(4389戸)を占める県営復興公営住宅の入居率と空き戸は【グラフ】の通り。特に会津地方の入居率低下が目立ち、3月現在の72・4%は県内平均より12ポイントも低い。

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 福島県は19年8月から自主避難者も入居できるようにしたが、これ以上の要件緩和には慎重だ。大熊、双葉両町で仮設住宅の無償提供が続いており、終了後の受け皿を確保するためだという。ただ、21~22年度の意向調査によると、復興住宅への入居を望む両町民は計82世帯で、約700ある空き戸数を大きく下回っていた。

 他県では岩手が20年6月から順次、全ての県営復興住宅の入居要件を一般県営住宅と同様に変更した。宮城では21市町村が復興住宅を整備し、このうち20市町村で被災者以外の入居実績があるという。

 被災状況が異なるとはいえ、本県も住宅再建や帰還が進むにつれて入居率はさらに下がると予想される。県は「空き戸の増加は課題と認識している。何らかの対策を考えなければいけない」(生活拠点課)としている。