81歳医師、最後の診療 小高診療所、20年は「ちょっとの時間」

 
スタッフと談笑する高橋さん(左)。「ほんのちょっとの時間だったような気がする」と南相馬市小高区での医師生活を振り返った

 東日本大震災前と後の計20年、南相馬市小高区の地域医療を支えてきた市立総合病院小高診療所の医師高橋哲之助さん(81)が27日、診療所で最後の勤務を終え、退職した。高橋さんは「(住民のために)何か役に立つことがあればと思いやってきた。スタッフや住民の方がいい人ばかりで、ほんのちょっとの時間だったような気がする」と小高での医師生活を振り返った。

 高橋さんは1998年に小高町立病院(後の市立小高病院)の院長に就任し、2008年に退職。本宮市の谷病院に勤めたが、震災と東京電力福島第1原発事故により休止していた小高病院が14年に再開されたことを知ると「浜通りの人たちが大変な思いをされている」と感じたという。同年からは谷病院での勤務の傍ら、非常勤の医師として週1回、小高病院で診療に当たった。

 「みんなに元気になってほしい」。高橋さんは21年に小高病院の後継となる小高診療所が開所した後も、住民の健康を見守り続けた。二本松市の自宅から約1時間半かけて通勤。100歳を超える住民が診療所を訪れることもあり、患者との雑談も楽しみに診療を続けてきたが、体調などを考慮し、本年度限りで退職することを決めた。谷病院での勤務は今後も続ける予定で「まだ現役なんですよ」と優しい笑顔で語った。

 27日には、門馬和夫南相馬市長から高橋さんに感謝状が贈られた。門馬市長は「お世話になった先生が病院にいらっしゃることで、小高の人たちが安心して通ったり、帰還の判断材料になったりした。長く地域医療に携わっていただき感謝する」とねぎらった。

 同診療所は4月以降、新たに別の医師が勤務するという。