48世帯76人に引き渡し 大熊・下野上地区、復興拠点の賃貸住宅
大熊町は28日、下野上地区に整備した原、大野南の二つの再生賃貸住宅で、入居予定者への鍵の引き渡し式を行った。入居するのは両住宅合わせて48世帯76人。13年ぶりに町に帰還した人、新たに移住した人のそれぞれが、春を迎えた大熊での新生活に期待を膨らませた。
住宅はいずれも木造平屋で原は20戸、大野南は30戸の計50戸を整備。車いす専用として造った2戸を除き満室となった。4月から入居する計48世帯のうち、帰還は20世帯、移住は28世帯になった。両住宅は2022年6月に避難指示が解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)にある。県が代行整備し、復興拠点内で初の町営住宅となった。
両住宅の集会所でそれぞれ、島和広副町長が入居予定の代表者に鍵のレプリカを手渡した。
「やっぱり大熊の空気は肌に合う。心がほっとする」。原の住宅に入居する阿部幸七さん(66)、節子さん(66)夫妻は13年ぶりに町内で生活を再開させる。2人とも仙台市出身だが、仕事の都合で30歳のころに大熊に移り住んだ。自然豊かな大熊の暮らしは快適だったが、その生活は原発事故で奪われた。帰還困難区域にある元の自宅は解体するため、避難先のいわき市から帰還する。阿部さんは「妻と2人で伸び伸びと暮らしたい。ここはついのすみか。避難先の皆さんには本当にお世話になった」と語った。
大野南の住宅に入るコーヒー焙煎(ばいせん)士の深沢諒さん(27)は、楢葉町から移住する。秋田県出身で、大学卒業後の20年から三島町や楢葉町に暮らし、地域おこしやコーヒーの焙煎事業を手がけてきた。移住の決め手は、同世代の友達が大熊に集まっていたから。「手作りのカフェでも開いて、住民同士の交流が深まるといいな」。帰還者と移住者、それぞれが「初めまして」の住宅群で、新たなコミュニティーを築きたいと考えている。
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