復興住宅...孤立させない 医師ら避難者支える「絆一座」復活へ

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の避難者を元気づけた医師や管理栄養士、作業療法士が健康指導などを行うボランティアの「絆一座」が、今年復活する。背景にあるのは、新型コロナウイルス禍を経て進行した避難者の孤立化や健康状態悪化への懸念だ。"座長"を務める絆診療所(南相馬市)の院長遠藤清次さん(66)は「当時と活動の形は変わるかもしれないが、住民の支援につなげたい」と話す。

 絆一座は、震災翌年に南相馬市鹿島区の仮設商店街に整備されたプレハブの絆診療所(現在は移転)の流れをくみ、遠藤さんらが始めた。当時の目的は仮設住宅に住む避難者の食(食事、栄養)、動(運動)、楽(楽しみ、生きがい)の改善につなげることだった。

 遠藤さんの医療講話のほか、管理栄養士の鶴島綾子さん(57)と作業療法士の岡本宏二さん(63)が料理を教えたり、簡単な運動を指導したりするのが一連の"公演"内容。諏訪中央病院(長野県)名誉院長で作家の鎌田實さん(75)も"時々客員"として加わり、活動に協力した。仮設住宅の解消などから、絆一座はその役割を一度終えた。しかし、震災から12年余りがたち、復興公営住宅に住む避難者らの孤立や運動不足などの問題が顕在化していることから、再び白羽の矢が立った形だ。

 現在は県社会福祉協議会のほか、避難先と避難元自治体の社協に所属する生活支援相談員が中心となって入居者支援に当たっている。

 復活後の絆一座は、避難者を取り巻く環境の変化を踏まえて活動を始める。遠藤さんは「仮設住宅は生活環境こそ良くはなかったが、住民同士の交流は比較的あった。避難元が別々の人が混在する復興公営住宅では入居者が閉じこもりがちで、新型コロナでそれに拍車がかかった状況だ」と課題を見据える。

 復活後の活動第1弾として、24日にJヴィレッジで生活支援相談員を対象にフレイル(虚弱)予防の講習を開く。遠藤さん、鶴島さん、岡本さんが絆一座での活動内容や経験を伝え、それぞれの支援活動に役立ててもらう。4月以降は、県内各地の復興公営住宅で"巡業"を行うことも検討している。

 遠藤さんは「避難者を支援したいというボランティアは各地にいて、われわれだけでなく生活支援相談員の方々が中心となれば活動の輪がさらに広がる。各地で絆一座のような取り組みが広がってほしい」と話している。(大内雄)

 能登にも長期支援を

 能登半島地震の被災地でも避難者の健康を守るため、東日本大震災を教訓に長期的な支援の必要性が指摘されている。作業療法士の岡本宏二さんは能登半島地震の被災地に思いをはせ「今後被災地でのボランティア活動が本格化する中で、絆一座のような考え方が広がってほしい」と願った。