復興公営団地別に生活支援策 福島県社協、避難者のニーズ対応

 

 県社会福祉協議会は本年度、県内の復興公営住宅計72団地ごとに、避難者の課題に特化した新たな生活支援策の作成に着手する。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から13年が経過し、避難者の高齢化や独居の割合が増える中、避難生活を取り巻く課題は多様化しており、避難者のニーズに応じた効果的な支援を拡充させる考えだ。

 県社協が昨年度、復興公営住宅72団地の約5000戸を対象に実施した調査では、単身世帯の割合は42.9%で、2020年の国勢調査から算出した県内単身世帯の割合33.1%を上回った。入居者の年代も7割超が60代以上となった。日常生活と心身の健康で「福祉・医療などのサービスを利用せずに日常生活を送ることができない」と回答した世帯は3割を超え、病気や人間関係などを理由に「引きこもりや閉じこもりがある」と回答したのも162世帯あった。

 この結果を受け、県社協は本年度中に各市町村社協と連携して調査データから団地別の課題を抽出、分析し、入居者と地域を結ぶ個別の支援策をつくる。基盤となる支援メニューは従来のサロン活動や買い物支援のほか、新たに入居者を取り巻く人間関係や社会資源を住宅地図に記して可視化する「団地支え合いマップ」を作成。交流サイト(SNS)を活用して安否確認をすることなどを想定している。各団地の現状に応じて支援を組み合わせたり、新たに追加したりして来年度から本格的な支援に乗り出す方針だ。

 また第2期復興・創生期間(21~25年度)の終了を見据えた見守り態勢の再検討にも乗り出す。現在、県内で見守り活動に当たる生活支援相談員や避難者地域支援コーディネーターは計約140人で、人件費や事務費などは国の復興財源で賄われている。

 一方で、26年度以降の財源の枠組みは示されていない。県社協は避難者支援に取り組む21市町村社協と共に支援の在り方を検討する組織を設置する方針で、財源の議論などを踏まえて26年度以降の支援の方向性の協議を進める。期間後の予算額によっては人員削減や事業の縮小も想定せざるを得ないという。

 県社協によると、岩手県や宮城県の地元社協では第2期復興・創生期間が終了する25年度に避難者支援業務を終える方向で検討が進んでいるが、本県はいまだ帰還困難区域が残るなど状況は異なる。県社協の山中啓嗣避難者生活支援・相談センター長は「本県は原発事故による広域避難が続いている。団地ごとの支援策とともに、限られた予算でいかに事業を継続できるか検討したい」とした。