【 三春町・馬場の湯温泉 】 町の良し...心ゆくまで 壁画に地域の宝
三春町の中心市街地と国道288号バイパスの間にある「馬場の湯温泉」。中心市街地からは坂を少し上ったところ、バイパスからは少し下ったところに「三ツ美屋旅館」がある。坂の途中に位置し、背後には里山を抱える。行き交う車の音や人の声は耳に入らず、辺りは静か。旅館に到着すると、温泉地だけが周囲のけんそうから逃れているかのような不思議な印象を抱いた。
三ツ美屋旅館の大浴場では、湯けむりの向こうに、花や自然豊かな「三春らしい」風景が広がる。里山の斜面に植えられたアジサイは3000株以上。木漏れ日が当たると、色がより一層鮮やかに映える。季節の移ろいにより新緑や紅葉など、自然の楽しみ方は変わる。湯船につかりながら自然散策できるのは、温泉の魅力の一つに違いない。
男湯の壁には、日本三大桜の一つに数えられる町の国指定天然記念物「三春滝桜」、三春出身で伊達政宗公の正室「愛姫(めごひめ)」が描かれている。女湯は三春駒。ここでも「三春らしさ」が演出されている。旅館社長の幕田祐二さん(37)は「滝桜の開花シーズンは県外からのお客さんも多い。三春の観光を楽しんで、ゆっくりとした時間を過ごしてほしい」と話す。
◆旅館名二つの説
源泉は単純弱放射能泉のラジウム泉。痛風や動脈硬化、慢性皮膚病などに効能があるとされ、温泉療養に適している。窓ガラスから見える自然や浴室の装飾に目を奪われていると、あっという間に時間が過ぎていたことに気付いた。大浴場から出ると、体が軽くなった気がした。幕田さんの妻で若女将(おかみ)を務める佐和子さん(35)が「昔から湯治場として使われてきた」と教えてくれた。源泉は周辺での砂防ダム建設などにより涌出量が減ってきたため、2000(平成12)年に掘削工事が行われたという。
旅館の創業は1931(昭和6)年。4代目となる幕田さんは鳥取県の温泉地で接客の修業を積み、家業を継ぐために12年前に三春に戻ってきた。約90年の歴史を誇る三ツ美屋の「美」は「よし」と読ませる。「読めない人のほうが多い」と佐和子さん。ウメ、モモ、サクラの花が一斉に咲くことが地名の由来になったとされる「三春」にちなみ、それぞれの花の美しさにあやかった―というのが、旅館で代々伝えられている名前の「説」だ。しかし、文書などに残っているわけではないため定かではないという。
そこで、若女将が最近、新たな解釈を生み出した。「風呂良し、料理良し、女将良し―の三ツ美屋。お客さんにも2通りの説を紹介しています」と、佐和子さんは笑う。どちらがより「三ツ美屋らしさ」を表しているのか。思いを巡らせながら湯船につかるのもまた「良し」なのかもしれない。
【メモ】三春町馬場の湯 三ツ美屋旅館=三春町字尼ケ谷126。客室は和室18室。宴会場を設けている。三春産野菜を使った料理を提供。日帰り入浴可。
≫≫≫ ほっとひと息・湯のまちの愉しみ方 ≪≪≪
【蔵改修して情報発信】三春町北町に5月、蔵を改修した観光案内所「TENJIN(テンジン)」がオープンした。観光パンフレットを置き、情報発信している。同町がまちなかの周遊観光強化を目的に整備を進めた。施設内には、休憩スペースを設置。オリジナル観光商品を販売している。公衆トイレや駐車スペースを用意しており、観光客に対応する。時間は午前9時~午後5時。年中無休。
〔写真〕5月にオープンした観光案内所「TENJIN」
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