【年末年始の家庭料理】「紅白」で幸せかみしめる

 
ナメタガレイの煮付け(手前)と焼き鮭。ともに年越し(大みそか)に食べる魚として、カレイは浜通り、中通り、鮭は会津で愛されてきた

 今年もあと少し。もうすぐ新年である。そこで今回のテーマは年末年始の家庭料理。おめでたい食べ物や食べ方を読者からのお便りを基に紹介する。

会津、鮭と白飯

 まず、会津からのメール。ずっと喜多方市塩川町に住む須藤まち子さん(70)は「大みそかは、ざくざく、白米ご飯、焼き鮭(じゃけ)をお膳に載せ神棚にお供えします。煮物、漬物など5品です。皆で夕食にいただきます。おそばは、元旦参りをした早朝、家長がそばを打ち神棚にお供えし、朝食にいただきます。明治生まれの祖母は、大みそか、紅魚に白飯が食べられるのが何よりのごちそうだったと言ってましたよ。お正月2日は、餅をついて神棚にお供えし、3日は麦飯にとろろと決まっています」。

 会津若松市在住で会津坂下町出身の、みーこさん(73)の実家は「お正月は12月28日の餅つきから始まる。大みそかには神棚や台所に餅を供え、夕食は白いご飯、こづゆ、新巻き鮭がメイン」。元旦は「母親が起きてすぐ土蔵の扉を開け若水を川でくむ。その水で沸かしたお湯で、梅干し入りのお茶をいただく。朝食はそば。元旦そばと言っていた。2日は朝に餅をつき。大根、ニンジン、油揚げの入った汁でいただく。3日は朝食にとろろ(三日とろろと言う)」。

 両者とも〈1〉大みそかは汁物と鮭、白いご飯〈2〉元旦そば、2日に餅つき、三日とろろ―で共通する。年齢と出身地から見て、昭和20~40年代の会津盆地中央部辺りの風物か。年越しそばがないのは意外だが、赤い魚と白い飯(紅白)で幸せをかみしめる点などは、素朴な信仰心を象徴するようで、すがすがしい。

カレイも浸透

 浜通りは、会津とは結構異なる。目立ったのが大みそかに食べる魚だ。目黒美子さんは「浜通りはなんと言っても『子持ち石ガレイ』の煮付け。これがないと年取り(大みそか)ではありません」。ふくしまFMの番組「福空間」で募集した「あなたの家のお祝い料理は?」への投稿でも「(浜では)お正月だとカレイの煮付け」(はじっこからマミリンさん)とあった。

 では中通りは。伊達市梁川町の佐藤寛子さん(72)は「四十数年前は大みそかの年越し料理は黄ガレイの煮付け、昆布、大根、さつま揚げなどのお煮しめ。大みそかには神様に白いご飯を供えます。年越しそばは食べません。正月はマグロの刺し身を買い、いかにんじん、きんぴらごぼう、青肌豆に数の子を混ぜたものなどを作ります」。

 郡山市出身の、あっこさん(43)=いわき市=は「(郡山では)正月やお盆は、あらいや甘露煮など鯉(こい)料理を食べる風習がありました。県外に住む叔父は『母さんの甘露煮を食べると帰ってきたなあってしみじみ思う』と言ってました」。

 中通りは、やはりいかにんじん、郡山名物の鯉料理が存在感を発揮する。が、浜通り同様、年越しの魚としてカレイも浸透しているようだ。中通りと会津の間にカレイと鮭の境界線があるのかもしれない。(鈴木博幸)