【カツに何かける?】たれの掛け算、味進化

 
5種類のたれが添えられた特製牛かつ定食(中、2340円)。左手前から時計回りに温玉たれ、山椒塩、ニンニクみそ、昆布醤油、とろろたれ。牛かつの大皿には練りわさびも=福島信夫山 迎賓館

 食事は欠くことのできないものだけに、料理の話題は盛り上がる。そこで今回は調味料の好みがテーマ。「あなたは豚カツに何をかけますか。ソース? しょうゆ?」

 しかし、世の中は一筋縄ではいかない。結論を言うと、さまざまな回答が寄せられた。特に、ふくしまFMの番組「福空間(スペース)」内での問いかけには、多様な「○○をかける」とのお便りをいただいた。

 細かに見ると、まず「ソース」という回答が目立つ。「ソース多め」「どろどろ(中濃?)ソース+千切りキャベツをご飯の上に」など。あの黒くて甘酸っぱいソースはやはり定番のようだ。

 だが「ソースだけ」という回答は少ない。「ソース+ごま+からし」「ソース+何か。例えばレモスコ(レモンを使った調味料)」など、「ソースにプラスアルファ」が「ソースだけ」派を上回った。

 非ソース派多彩

 一方、ソース以外をかけるとの回答は、ソース派に劣らず多かった。例えば「おろしポン酢、とろろ芋」「わさび塩。衣のサクサク感を楽しみたいから」「酢」「ケチャップ」「キムチをのせる」。

 また「みそ派」が比較的多い。みそ好きの愛知県からの回答「八丁みそベースのたれ」は納得だが、それ以外にも「自作のみそだれ+すりごま、にんにく」「みそ+みりん、砂糖」も。

 逆に少ないのが「しょうゆ派」だ。「しょうゆ。またはかけない」や「年齢を重ねて今はしょうゆ」など、皆「淡泊な味が好み」を理由に挙げる。しょうゆ派回答者は「非ソース派」のようだ。さらに、こんな投稿も。「カツに限らず、アジフライやコロッケなど揚げ物は食べ方でかけるものが違います。そのまま食べるときは中濃ソース。ご飯のおかずとして食べるときはおしょうゆです」(会津美里町の女性)。白米に合わせ、しょうゆ―これは分かる気がする。

 もう一つ気になる投稿が「ソースですが、外食でちょっと高いものを食べるときは塩で」。塩=お店の味...ということか。そこでお店を取材した。

 福島市のレストラン「福島信夫山 迎賓館」(和食 くろ沢、牛かつ 牛若丸)は、店内で提供する名物の「牛かつ」に山椒(さんしょう)塩、ニンニクみそ、昆布醤油(しょうゆ)、温玉たれ、とろろたれ―以上5種類の「たれ(調味料)」を添える。

 この多様さの理由を、同店を経営する「くろ沢」の黒沢健太営業推進部長は〈1〉地元でなじみの薄い牛かつを出すに当たり研究した結果、この5種類がマッチ〈2〉食べる人が選択できる〈3〉食べ飽きない―と挙げる。

 特に、食べる人のたれの選択について黒沢部長は「豊富なたれの組み合わせで、新たな食べ方が発見できる」とも言う。実際に、人気のたれはニンニクみそと山椒塩だが、「わさび+しょうゆ」「温玉+他の調味料」、さらには「とろろ・温玉+ご飯」の組み合わせを楽しむ人もいると言い、黒沢部長は「たれは掛け算です」と笑う。

 なるほど、お店の進化ぶりは予想以上で、食べる側の舌の多様化もすごい。カツのソースは、もはやソースか、しょうゆかの時代ではなく、掛け算の時代のようだ。(鈴木博幸)