主役は家庭料理

　喜多方ラーメン店やそば店が軒を連ねる喜多方市山都町で２年前、心も胃袋も満たされる家庭料理の店「ままや食堂」がオープンした。のれんをくぐると、店主の高崎真由美さん（４３）が明るい笑顔で出迎えてくれる。山都では珍しい、そばやラーメンがメニューにない店。今ではすっかり地域になじみ、住民にとってなくてはならない存在になっている。

　同市山都町出身の高崎さんは保険会社勤務などを経て、７年ほど前から、会津坂下町の介護施設からの委託で利用者の食事を作り、施設まで配達する仕事をしていた。栄養学を独学するなど、熱心に向き合っていた仕事だった。しかし２０２０年５月、施設の運営上の都合で突如として契約が打ち切られ、３９歳にして職を失うことになった。「まさかこんなことになるとは」

　新たな職を探す中、ぼんやりと頭に思い浮かんだのが、生まれ育った山都で飲食店を経営することだった。「市街地では、高い値段を支払えば何でも食べることができる。山都には安くて、田舎ならではの『融通の利く店』が必要だと思った」。２１年３月、両親が実家の一角で営んでいた衣料品店の空き店舗を改装し、新店舗をオープンさせた。

　「おなかいっぱいご飯を食べてほしい」との思いを込め、ご飯屋を表す「まんまや」から派生し、「ままや食堂」と名付けた。

　山都町には、そば店や喜多方ラーメン店が多く立ち並び、「どの店も私が幼い頃から続く老舗ばかりで、町並みは当時からほとんど変わらない」と高崎さん。一方で、ままや食堂のメニューには「そば」「ラーメン」の文字は見当たらない。「ラーメンやそばとは別の分野でお客さんに喜んでもらいたい」。なじみのあった家庭料理を振る舞うことに決めた。

　重箱ランチ人気

　店は高崎さんとアルバイトの女性の２人で切り盛りしている。高崎さんが前職で培った知識や経験を生かし、栄養バランスや彩りを重視したメニューが並ぶ。中でも女性に人気なのが、７品ほどの手料理を重箱に詰めた「今日のランチ定食（肉ｏｒ魚）」。メインは肉料理と魚料理から選ぶことができ、白米や卵焼き、ごぼうサラダ、なすの甘みそ、煮物など、彩り豊かな手料理がぎゅうぎゅう詰めになっている。「重箱のふたを開けた時のお客さんの『うわ～』と喜ぶ反応がうれしくてね」と高崎さんはほほ笑む。

　ほかにも男性に人気がある「からあげ定食」「カレーライス」「肉うどん」などのメニューがそろい、価格は３００～８００円という安さ。コーヒーは自分で注ぐセルフサービス方式で飲み放題。「ご自分で好きなだけ飲んでください」との張り紙が客に喜ばれている。

　今では常連客も増え、高齢の客からは「薄味にしてほしい」との要望を受ける時もある。客の好みの味を覚えて、その人に合った味付けにすることもあるという。「お客さまに『ここなら、わがままを言える』と思ってもらえるような"わがまま屋"を目指したい」と高崎さん。これからも地域住民が唯一わがままになれる食堂であり続ける。（阿部二千翔）

青い三角屋根が特徴の「ままや食堂」。店名には「おなかいっぱいご飯を食べてほしい」との思いを込めた

【住所】喜多方市山都町字西原２８３２の４

【電話】０２４１・３８・２０３８

【営業時間】午前１１時～午後２時

【定休日】日曜日

【主なメニュー】
▽今日のランチ定食（肉ｏｒ魚）＝７００円
▽からあげ定食＝７００円
▽肉野菜炒め定食＝７００円
▽とんかつ定食＝７００円
▽おにぎりセット＝３００円
▽カレーライス＝６００円
▽カツカレー＝８００円
▽カツ丼（煮込みｏｒソース）＝７００円
▽肉うどん＝５００円
▽カレーうどん＝５００円

女性に人気の「今日のランチ定食（肉）」。７品ほどの彩り豊かな手料理がぎゅうぎゅう詰めになっている

　山都産野菜仕入れ

　料理にふんだんに使われている野菜は、高崎さんが地元山都の知人農家から直接仕入れている。夏はナスやトマト、キュウリなどを取り入れ、これからの寒くなる季節はダイコンやハクサイなどを仕入れる予定だ。農家との日々の情報交換で、旬の野菜を多く取り入れるようにしているという。高崎さんは「地元の人とのつながりがあるからこそ、お店を続けられる。これからも持ちつ持たれつの関係を築いていきたい」と話す。

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　ＮＨＫラジオ第１「ふくどん！」で毎週木曜に連携企画

　まち食堂物語は福島民友新聞社とＮＨＫ福島放送局の連携企画です。ＮＨＫラジオ第１で毎週木曜日に放送される『ふくどん！』（休止の場合あり）のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。