「豆腐職人」柔らか発想 大椙食品(棚倉町)、大椙広さん

 
自慢の豆腐を手に「伝統の技と新たなアイデアで挑戦していきたい」と語る大椙さん

 「おいしい豆腐は食卓を楽しくする。豆腐で笑顔をつくることが最高の幸せだね」。

 豆腐や豆腐加工食品を製造する棚倉町の大椙(おおすぎ)食品社長の大椙広さん(39)は、商品を手に晴れやかな表情を見せる。1901年創業の老舗豆腐店の5代目店主となり、間もなく8年。伝統の技術を生かしつつ、新商品開発や直売店舗の設置、ネットショップの開設など時代に即した経営をしている。

 インド哲学学んだ

 白河旭高を経て東洋大文学部でインド哲学を学んだ。帰郷してうすい百貨店(郡山市)に勤務し、2015年11月に家業を継いだ。小さな豆腐店が生き残るにはどうしたらよいか。小規模生産で小回りが利くことを逆手に取って次々に新商品の開発を進め、差別化を図った。百貨店で学んだブランディングの知識を生かしている。「豆腐」を「豆冨」と表現し、自ら「豆冨職人」と名乗る。屋号を生かし「叶や豆冨」と銘打ってパッケージなどでアピール。バジルの風味の豆腐や、寄せ豆腐に青豆を入れた商品などを開発した。

 「伝統+アイデア」

 社会のニーズにも敏感だ。豆腐の搾り汁が手荒れに効果があるとして、大椙さんの家庭では昔から搾り汁で手を洗っていたという。新型コロナウイルス禍で手指消毒の機会が増え、手荒れに悩む人が増えたと聞くと、「搾り汁でハンドクリームを作れば売れるのではないか」とひらめき、すぐに商品化。アイデアマンの大椙さんは「伝統の技と、新たな発想で挑戦を続けたい」と意気込む。

 シオクリビトのECサイトで全国から注文が入る。「生産者を紹介する斬新な切り口が、購入の入り口につながることを知った。もっと売り方を改善していきたい」と大椙さん。人口減少などで地方の企業に逆風が吹く中、若き経営者は新しい発想を武器に挑戦を続ける。(国分利也)