心が喜ぶ無農薬加工品 福福堂(田村市)、稲福由梨さん

 
「福島の農産物のおいしさを発信していきたい」と話す稲福さん

 田村市滝根町の福福堂は化学肥料を使わず、無農薬栽培にこだわった農産物の加工品を製造、販売している。代表の稲福由梨さん(38)は「体にいいもの、心が喜ぶものを届けたい」と話す。代表商品の「黒米甘酒」は米こうじとコメ、黒米だけで作る自然な味わいが特徴で、人気を集めている。

 原材料は自家栽培

 自宅敷地内にある加工場では甘酒のほか、ブルーベリージャムやエゴマなどの加工品を製造している。古代米の一つである黒米などの原材料は自家栽培。「大量生産できない分、ほかにない変わった商品を作っている」と稲福さん。工夫しながら商品開発に取り組み、県産農産物を使った加工品を発信してきた。

 商品の中でも現在販売している「エゴマ豚みそ」は、夫の和之さん(52)の古里・沖縄で食べられている油みそをヒントに開発し、ふくしま満天堂プレミアム2019を受賞した自信作だ。

 稲福さんは約10年前、滝根町に移住してきた。和之さんとの出会いがきっかけだった。東京で生まれ育った稲福さんは滝根町で開かれた田植えイベントに参加。移住して農薬や化学肥料を使わない農業に取り組んでいた和之さんの姿に引かれた。11年に結婚し、13年から和之さんが栽培した農産物の加工品の製造、販売を始めた。

 豊かな里山を未来に

 事業開始から10年が過ぎ、地元農家からのジャムの加工依頼を受けるなど地域とのつながりも育んできた。稲福さんは「豊かな里山を未来に残せるように2人で農業を続け、福島の農産物のおいしさを発信していきたい」と笑顔で話す。(坂本龍之)