メロンパン人気 地域の誇りに いわき・今井聖訓さん

 
「子どもたちの期待に応えたい」と話す今井さん

 いわき市小名浜の今井製パンは、市内外の小中学校約70校に給食のパンを届けている。3代目の今井聖訓(きよのり)さん(61)は「給食を楽しみにしている子どもたちの思いに応えられるパンを届けたい」と思いを語る。

震災で工場再建

 今井さんは同市四倉町出身。パンを作る祖父と父の背中を見て育ち、東京の大学に進学した。人気パン店での経験を経て故郷に戻った今井さんは、35歳で家業を受け継ぎ「給食という体験を大切にしてほしい」という思いで、パン作りの現場に立ち続けた。

 しかし、東日本大震災で日常が大きく変わった。当時、四倉海岸のそばにあった工場は津波で1階部分が流された。原発事故による影響も鑑み、再建に向けては工場移転を決断した。2013年に小名浜工場を開設した。一からの再建に、今井さんが「前に進む原動力になったのは給食を待っている子どもたちだった」と振り返る。

おいしい給食に

 毎日午前2時ごろから稼働する工場では、給食の献立に合う約10種類のパンを作っている。中でもしっとり食感が特徴のメロンパンは、いわき市オリジナルメニューとして子どもたちからの人気も高い。今井さんは「育った町で食べた給食のメロンパンが子どもたちにとって地域の誇りになったらうれしい」と笑顔を見せる。(根本藍子)