高橋洋平氏寄稿(1)復興とは何だろうか 数字では表せない瞬間

 

 県庁に赴任してから、ずっと「復興とは何か」を考えてきました。恥ずかしながら、その答えはまだ見つかっていません。

 企画調整課での仕事の一つに、復興財源に関する政府との調整がありました。今後の復興のために必要となる予算を見積もり、政府と折衝する仕事です。結果として本年度から5年間で約1.1兆円などの財源を確保することができました。

 行政として復興のための予算や達成目標を数値で明らかにする努力は不可欠であり、私もデータとエビデンス(根拠)を重視した仕事を心掛けてきました。一方で、数値化は復興の一面を客観的に把握するための技術にすぎず、復興の本質を捉えるには至りません。真の復興とは何か考える中で、十七字の豊かな作品たちに出合いました。

 「かにみつけ おやこのわらい ひびくうみ」矢吹町立善郷小1年(当時) 星結菜さん(子)

 「波しぶき あふれる笑顔 戻りつつ」星陽子さん(母)

 親子でまた海遊びをするという夢が叶(かな)った情景が目に浮かび、こうした瞬間こそ復興なのではないかと、しみじみ感じられました。県教育庁が実施している「十七字のふれあい」の作品からは、うちの畑でまた野菜がとれたら、また家族と一緒に暮らせたら、ふるさとで友と会えたらなど、県民それぞれの復興のかたちが鮮やかに描かれます。

 つまり、復興とは「悲しみを受け止め、それでも自ら歩みを進め、自由や幸福の実感を噛(か)みしめること」といえるのかもしれません。福島の美しい十七字にふれて、心温まる多様なる復興、数字では表せない本当の復興を学びました。

 たかはし・ようへい 宮城県登米市出身。東北大教育学部卒。2005年に文部科学省に入省。教育改革推進室専門官、私学助成課長補佐などを経て16年から本県に出向し、教育総務課長を3年、企画調整課長を2年務めた。21年4月に同省に復帰し、情報教育・外国語教育課長補佐を務める。