【5月1日付社説】子どもの自殺/危険の兆候を見逃さないで

 

 自ら命を絶たなければならない状況に子どもを追い込んでしまわないよう、SOSを見逃さないことが大切だ。

 警察庁の自殺統計に基づく厚生労働省のまとめによると、昨年の小中高生の自殺者数が513人で、過去最多だった前年から横ばいとなっている。本県では20歳未満の11人が亡くなった。

 子どもの死因で最も多いのが自殺だ。日本財団が2021年に行った意識調査によると、15~19歳の約15%が自殺したいと考えたことがあり、約5%が1年以内に自殺未遂を経験したと答えた。

 自殺した子どものほかにも、自殺を考えたり、実際に自傷行為に及んだりしている子どもが相当数いるとみるべきだろう。少なくない割合の子どもが死にたいとの思いを抱えているのを踏まえれば、自殺を考える子どもをできる限り減らしながら、最悪の結果に至るのを食い止めるのが重要だ。

 厚労省によると、子どもの自殺理由で多いのは進路に関する悩みや学業不振、親子関係の不和だ。女子については、病気の悩みも多い。誰しもが経験しうる悩みだが、それを一人で抱え込む状況は避けなければならない。

 自傷行為を行う子どもは、周囲に相談することが少ないとの調査結果がある。自分だけでは解決の糸口が見いだせない悩みは、いつでも周囲に相談していいとのメッセージを学校や家庭で繰り返し伝えていく必要がある。
 保護者や学校に相談しにくい悩みの場合には、各都道府県などが相談窓口を設けている。本県は電話相談に加えて、子ども世代でも使いやすいようSNSによる相談を行っている。こうした外部の窓口についても、普段から説明しておくことが求められる。

 以前より元気がなく、口数も少ない、食事の量が減ったなどは注意が必要な状況だ。うつ病など精神疾患の影響が見られることもある。こうした変化を見逃さないようにしてもらいたい。

 子どもに異変を感じた場合は、「どうしたの」などと声をかけ、まずは話をじっくりと聞くようにするのがポイントだ。

 誰かに大切にされていると感じることで、気持ちが改善に向かう場合がある。助けたい、助けようとしているとの姿勢が相手に伝わるようにすることが大切だ。

 大型連休中は普段より、子どもと過ごす時間を確保できる人が多いだろう。子どもの様子を観察しつつ一緒の時間を楽しみ、保護者がいつも見守っていることを実感できるようにしてほしい。