磐城エース・沖『魂の114球』 聖光学院への思いも背負い粘投

 
【磐城―国士舘】甲子園のマウンドで114球の力投を見せた磐城のエース沖

 第4日は15日、3試合が行われ、磐城は3―4で国士舘(東京)に敗れ、甲子園で45年ぶりの勝利はならなかった。

 最速130キロ中盤の直球に、打ち気をそらす緩い変化球。「何とかロースコアの展開に持ち込みたかった」。磐城のエース沖政宗(3年)は右肘の状態が万全ではなかったが、粘り強く114球を投げ抜いた。

 3回、国士舘の強力打線が襲い掛かる。連打と自身の失策などで3点を失い、試合をひっくり返された。同点で迎えた6回は犠飛で勝ち越し点を奪われ、なおも2死三塁のピンチ。それでも、マウンド上で笑っていた。「周りがよく守ってくれている」。直球で内野ゴロに仕留めると、これ以上は得点を許さなかった。

 「誰かのために熱く」。春の選抜大会への出場が決まった際にグラブを新調し、刺しゅうで入れた文字だ。昨年10月の東日本台風を経験したことで、自分が野球をする目的を見つめ直し、応援してくれる学校の友達や野球部OB、地域住民らへの感謝の気持ちを込めた。

 そして、甲子園出場がかなわなかったライバルの思いも背負っていた。今夏の代替大会では準々決勝の聖光学院戦に先発し、7回途中4失点で降板。チームは逆転負けした。

 「聖光学院は自分たちに勝っても甲子園に出られない」。そんな葛藤を抱えて臨んだ一戦だっただけに、沖は試合後、「勝って納得してもらえる試合がしたかった。負けてしまい申し訳ない」と言葉を詰まらせた。

 卒業後は東京六大学で野球を続けることを目指す。「甲子園は普段できないようなプレーが出て不思議な場所だった。この経験を生かし、また上のレベルを目指したい」と沖。静かに汗をぬぐい、憧れの舞台を後にした。

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