25日聖火リレースタート「心に刻む」 福島県担当者、悩んだ1年

 
聖火リレーに備えて打ち合わせをする斎藤さん(右)

 新型コロナウイルスの影響で1年延期された東京五輪の聖火リレーが25日、Jヴィレッジ(楢葉町、広野町)を出発する。「聖火リレーには人と人、心と心をつなぐ役割がある。準備をしていると、そんな思いが自然と湧き起こってくるんです」。県の担当者は高揚感を抱きながら、佳境を迎えた準備に奔走している。

 「もう1年ですか」。県庁本庁舎5階にある県オリンピック・パラリンピック推進室。聖火リレーを担当する主任主査の斎藤俊之さん(43)は壁に掲げられたカレンダーに目を移した。急転直下の中止決定からの1年は、暗中模索の日々だった。

 昨年3月24日、出発2日前に中止を知った。聖火ランナーへの連絡や警備のキャンセル、関係先との調整。推進室は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。「再びできるのか」。見通しが示されない中で業務を前に進めた。先が見えず「精神的につらかった」と斎藤さんは明かす。

 その後、実施は決まったが、感染症対策は必須に。密集の回避や、マスクを着用して拍手による沿道での応援など、状況は「百八十度変わった」と感じている。

 斎藤さんの元には聖火リレーの実施に懐疑的な意見も寄せられた。ただ、意向調査などで聖火ランナーと面談した際、「古里復興の感謝を伝えたい」「地元の魅力を発信したい」との声を聞き、気持ちは固まった。

 斎藤さんは聖火リレーに携わりたいと推進室を希望。聖火リレーの運営を統括して2年が過ぎようとしている。「121日間続く聖火リレーの最初が福島県。コロナ禍の聖火リレーは今後のモデルケースになり得る」。推進室で働き始めた当初に感じていたうれしさが、強い責任感に変わった。

 斎藤さんは聖火リレーについて「人の心に刻まれるもの」と表現する。走者、スタッフ、観客、関係する全ての人によってトーチはつながれる―と。今春の異動で推進室を離れることが決まった。「(県内で見た聖火が)いつまでも心に残り続けてほしい」。県民にとって特別な聖火リレーになることを願っている。

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