円熟の自転車・新田祐大『金』へ 東京五輪・開幕まで「1年」

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で延期となった東京五輪の開幕まで23日で1年となった。選手を取り巻く環境はこの半年で一変、来年7月23日に予定通り五輪の開会式が行われるか不透明感も漂っている。それでも本県関係選手は4年に1度のスポーツの祭典へ歩みを進める。

 「目指すところはてっぺん」。新型コロナの影響でオンラインで6月に行われた自転車トラックの代表発表会見。2年に及んだ選考レースを戦い抜いた新田祐大(日本競輪選手会、白河高卒)は強い口調で言い切った。悔しさを味わった2012年ロンドン五輪から8年。大舞台への挑戦権を再びつかんだ。

 2年間、代表枠獲得のため世界各地を転戦。本業の競輪よりも代表での活動を優先させ、世界トップとの差を縮めることに専念した。武器は「捲(まく)り」といわれる後半の爆発的な加速。19年世界選手権のケイリンで2位に入り、国際自転車競技連合(UCI)の世界ランキングで初めて種目1位に立った。

 26歳で初めて臨んだロンドン五輪。渡辺一成(双葉町出身、小高工高卒)らと組んだチームスプリントでメダル獲得が期待されたが、8位に終わった。自転車のペダルが足から外れるアクシデントが響いた。「足を引っ張る形になった」。不本意なレースに新田は涙を流した。

 雪辱を誓った16年リオ五輪は代表落選。30代の円熟期に入り、新田は「最後の挑戦」と一層自らを追い込んだ。月~土曜日に一日中自転車をこぎ続けるため、日曜日は動くこともままならない。「この3年半はただただ苦しかったが、五輪まで耐える、耐えなきゃいけないと思っていた」

 「まだまだ成長」

 新型コロナの影響でW杯など今年の大会開催も決まっていない。しかし、新田は「1年間の準備期間ができた」と前向きに捉える。来年は35歳になる。04年アテネ五輪から3大会連続で金メダルを獲得、ロンドン五輪では36歳だった名選手クリス・ホイ(英国)の名前を挙げ、「まだまだ成長していけるし、問題ない」と内外の不安を一蹴した。

 小学3年の時、父親に買ってもらったマウンテンバイクにまたがった。高校は古里の会津若松市を離れ白河高に進学、競技の基礎を築いた。自国開催の五輪に懸ける思いは人一倍強く、1964年東京五輪に出場した恩師班目秀雄(白河市在住)の存在が大きい。「(五輪に)出ることが恩返し。メダルを獲得できたら一生ものの思い出になる」と1年後を思い描く。

 福島県勢、代表内定は3人

 東京五輪出場が内定している本県関係選手は、新田のほか、カヌースプリントの宮田悠佑(和歌山県教育センター学びの丘、安達高卒)、レスリング女子76キロ級の皆川博恵(クリナップ)の3選手。バドミントン男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本、富岡高卒)と混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗組(日本ユニシス、富岡高卒)も出場を確実にしている。

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