働く母...生活に追われ 「子育て世代」ニーズに合わせ支援策を

 
家族と遊ぶ佐川さん(右)。子どもたちと触れ合う時間も大切にしている

 少子化に歯止めがかからない状況が続いている。参院選で各党は子育て支援の強化を主張しているが、子育て世帯は明るい将来を見通せないのが現状だ。「安心して子育てできる環境にして」。子を持つ親の切実な声が聞こえる。

 「うちの子どもは育ち盛り。生活面の余裕はあまりないですね」。棚倉町で中学2年の長男(14)と小学6年の次男(12)を一人で育てる佐川亜矢子さん(41)はつぶやく。

 勤務先からの給与や子ども手当などを合わせて、毎月の収入は22万~23万円ほど。そこから生活費や教育費、住宅ローンなどでほとんどが消費される。

 心身の負担も大きい。家事に加え、平日は次男を約3キロ離れた小学校に送り届けて出勤し、夜まで働く。週末は毎月2回ほどの出勤に加え、子どもの部活動やスポーツ少年団の遠征の手伝いもある。仕事の関係で遠征の手伝いを引き受けられない時もあり、心苦しい思いでいる。

 目の前のことで精いっぱいの生活が続く。「母親が働けて、子育て世帯が住みやすい環境づくりや制度を整えてほしい」と感じている。

 県によると、2021年生まれの県内の赤ちゃんの数(出生数)は前年比566人減の1万649人。過去最少だった20年を下回った。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」は1.36で、前年から0.03ポイント低下。国内全体の合計特殊出生率は1.30で6年連続減少した。

 国が昨年公表した調査結果によると、日本人の約6割が「子どもを産み育てにくい国」と感じていると回答。約2割にとどまったフランスやドイツなどと大きく差が開いた。

 「保護者から寄せられるニーズが多様化している」。福島市で子育て支援に取り組むNPO法人「こども緊急サポートふくしま」理事長の佐藤由紀子さん(69)は支援の在り方の変化を指摘する。同法人では早朝・夜間の緊急時の預かりや、産前産後の家事支援などを行う。21年度は約2250件の活動実績があった。「若い世代の保護者の中には頼る人が近くにおらず、隣近所との関係性も希薄といった傾向があり、さまざまな要因で社会から孤立するケースもある」という。

 佐藤さんは「国や行政が補助金を出したり、箱ものをつくったりするだけでは、もう不十分。変化する現代社会に合わせてソフト面の支援が必要」と主張。その上で「女性が働く時代に複数の子どもを持つことが難しい状況にある人もいる。少子化対策を本気で進めるには、具体的な支援策を講じていく必要がある」と訴える。