地域に合う防災対策が急務 参院選、「共助」の仕組みづくりを

 
堤防の整備が完了した阿武隈川を見つめる石井さん。「ハード面の整備に加え、共助を支える施策も重要だ」と話す=本宮市

 連日の猛暑が気候変動の影響を実感させる中、県内では激甚化している台風シーズンの被害に備えた防災対策の再点検が進められている。「ハード、ソフトの両面で地域に合った対策を急いでほしい」。2019年の東日本台風の被災地からは、参院選で実のある防災対策の議論が深まることを望む声が上がる。

 「防災は一つの対策で済むわけではない。災害がまた起こる前提で、あらゆる対策を講じていく必要がある」。本宮市区長会連絡協議会長を務める石井隆さん(57)は、多角的な防災対策の必要性を強調する。

 市内では、東日本台風で氾濫した阿武隈川の堤防工事が昨年6月に完了し、同規模の水位にも対応できる高さとなった。安達太良川でも堤防整備が進み、ハード面の対策は着実に目に見えてきた。しかし、石井さんは「『堤防ができたから大丈夫』ではいけない。犠牲者をゼロにするには地域や隣近所で助け合う『共助』が重要になる」と指摘する。

 市によると、共助を担う自主防災組織の母体となる行政区(町内会)に加入している世帯は全体の85%(4月1日現在)にとどまり、5年前を3.5ポイント下回った。アパートなどの集合住宅の入居者を中心に、新規加入が伸び悩んでいるという。

 東日本台風では集合住宅で暮らし、町内会に入っていなかった2人が逃げ遅れ犠牲となった。市内では水害を教訓に、自主防災組織を新設した町内会がある一方、防災活動を続けられない町内会も出てきている。石井さんは「(国が)地域の防災活動を後押しする支援策や、時代に合った形で地域で助け合える仕組みづくりなど、ソフト面を強化する施策が必要だ」と訴える。

 東日本台風を受け、国が県や市町村と連携し阿武隈川で着手したのは、遊水地の整備や河道掘削などを組み合わせた緊急治水対策プロジェクトだ。

 阿武隈川の氾濫で自宅が床上約70センチの浸水被害を受けた須賀川市前田川の水野栄さん(75)は「大雨が降ると今でも不安になる。洪水を防ぐ対策を進めてほしい」と語り、川面を見つめた。

 緊急治水対策プロジェクトの進展に期待する一方で「岩石や中州の草木で河道の狭い場所がある。少しでも取り除いてもらえれば、洪水の恐れは減るのではないか」と考えを語る。

 防災士の資格を持つ水野さんは須賀川市の防災を考える会会長として、勉強会などで自身の被災体験を交えながら市民に災害への備えを説いている。

 今後、気候変動により想定を上回る災害が起きるのではないかとの懸念は拭えない。「自分たちも命を守る方法を伝えることはできるが、根本的な災害対策は行政に主導してもらうしかない。災害から命を守るにはどうすべきか、しっかりと議論して住民に示してほしい」