高校生を震災「語り人」に 富岡NPO、県内巡るグループ結成へ

 
「高校生の若い力に期待したい」。語り人キャラバンの結成に向け、語る会のスタッフと構想を思い描く青木代表(中央)

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の記憶を語り継ぐ「語り人(べ)」の活動に取り組むNPO法人富岡町3・11を語る会は、高校生中心の「語り人キャラバン」を結成する。小学校低学年以下の子どもに、震災当時の様子を分かりやすく伝える活動を展開する考えだ。震災の記憶が残る最後の世代とされる高校生を中心に参加を募り、紙芝居や演劇などを通じて、震災の記憶を次代につないでいく。

 震災から12年がたち、語り人の高齢化と、震災を知らない世代への記憶の継承は喫緊の課題だ。同会の語り人の登録者は約20人だが、そのうち60~80代が9割近くを占める。下の世代に目を向けると20代が3人、30~50代はゼロ。記憶を継承するため、若い世代の育成が求められている。

 そこで青木淑子(よしこ)代表(75)らが思いついたのが、県内各地で語り人活動を展開するキャラバンの結成だ。同会の語り人が、キャラバンに参加する高校生らに体験談などを伝えてメンバーとして養成。休日や夏休みなどの長期休暇を活用し、小学生らに震災の記憶を伝えていく計画だ。

 早ければ今秋にも活動を始める予定で、地元の小学校や幼稚園を訪問してもらい、自作の寸劇や読み聞かせを中心に高校生らしい内容で震災の記憶を伝えていく予定だ。

 青木代表は富岡町内に住み、語り人の活動に取り組む。元高校教諭で震災前には2004年から4年にわたり富岡高の校長も務めた。震災時は郡山市で暮らしていたが、避難した浜通りの人たちを避難所で支援すると、富岡町への強い思いが再び湧き起こった。「町との縁を再び感じ、富岡の震災体験を語り継ごうと思いを強くしたのが、今につながる活動の原点だ」

 志を同じくするスタッフも増えて充実した活動を展開していたが、同時に不安もよぎった。「活動が息切れしないように次の世代につなぐ若い力が必要になると思った」。キャラバン結成はそのための一歩だ。

 これまでの語り人は座談会形式で自身の体験を文字や資料、写真を通じて伝え、経験や知識に訴える内容が多かった。しかし、キャラバンのメンバーとなる高校生らに期待しているのは「若い人らしく震災を学びながら、子どもたちに分かりやすく伝える姿勢」だ。被災者の使命として「誰一人取り残さない防災」につながる活躍を願っている。

 目に見えない放射線の怖さや被災した当時の暮らしを絵本、紙芝居、演劇で伝える―。視覚でどのように表現し、災害のリスクを伝えてくれるのか、語り部を目指す高校生らの成長を楽しみにしている。(小野原裕一)

 メンバーを募集

 キャラバンのメンバーは通学先の学校別に中通り、浜通り、会津で各5人ほどを募る。問い合わせは同会富岡事務所(電話0240・23・5431)へ。