「The Turnip」(かぶ) ―vol.10

 
再話:斎藤君子 英語:サラ・アン・ニシエ 絵:小野かおる 吹込:白坂道子/久米明/ドリーン・シモンズ/マイケル・バナード 音楽:北爪道 ラボ教育センター(ラボ出版) 価格:2,750円

 春の足音が聞こえてくる季節となりました。今月はロシアの昔話『The Turnip(かぶ)』をお届けします。

 じっちゃとばっちゃが一粒の小さなかぶの種をまきました。かぶは芽を出してどんどん育ち、やがてじっちゃの背より大きくなります。じっちゃはかぶをぬいて食べようとしますがぬけません。じっちゃはばっちゃを呼んで一緒にひっぱりますが、なかなかぬけません。まごむすめ、いぬ、ねこも手伝ってもぬけません。最後にはねずみがやってきます。

 「The mouse pulled the cat,the cat pulled the dog,the dog pulled the granddaughter,the granddaughter pulled Grandma,Grandma pulled Grandpaand Grandpa pulled at the turnip.」
 (ねずみは ねこを、ねこは いぬを、いぬは まごを、まごは ばっちゃを、ばっちゃは じっちゃを、じっちゃは かぶを ひっぱった。)

 ねずみが加わって、やっとこさかぶはぬけるのでした。

 登場人物が加わるたびに文章は長くなりますが、英語でも日本語でも繰り返しのリズムが心地よく耳に残ります。子どもたちは、すぐにこの英語のリズムをとらえて唱えだします。登場人物が、大きいものから小さいものの順で登場し、最後には一番小さいねずみがひっぱってぬけるという予想外の展開。かぶがぬけた後の、まるで自分のお手柄であるかのようなねずみの自慢げな態度も目を引きます。

 絵を描いた小野かおるさんは、ロシアの大地の色に合い、ロシア料理の材料としてもよく使われるかぶがおもしろいと、オレンジ色のかぶを描いたそうです。他に多くを描かず想像力をかきたてる広大な大地に、とてつもなく大きなかぶが、どーんと根を張るさまは見応えがあり、子どもたちを絵本の世界へ引き込みます。

 絵本を読むだけでなく、仲間や家族で「よいしょ、こらしょ!」と声を合わせてひっぱり、最後にかぶがぬけると気分はスッキリ。ぜひ、お試しください。

 ラボ・パーティ講師 佐藤暁子 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。

2022年3月号・Me&Youより