「Olle's Ski Trip」(ウッレと冬の森) ―vol.19

 
作・絵:エルサ・ベスコフ 英語:クリスティーナ・フォーセル 日本語:小野寺百合子 吹込:白坂道子、ルーシー・アプルビー 音楽:小森昭宏 ラボ教育センター(ラボ出版) 価格:2530円

 街はクリスマスのイルミネーションで彩られ始めました。今月は、スウェーデンが誇る絵本作家エルサ・ベスコフの『Olle's Ski Trip(ウッレと冬の森)』をご紹介します。

 6歳の誕生日にお父さんから新しいスキーを買ってもらった少年ウッレ。クリスマスの2、3週間前、待ちに待った雪が降り、うれしくなったウッレはスキーを履いて森に出かけていきました。

 雪で覆われた森で出会ったのは、白霜じいさん。息を吹きかけるとあたり一面が白い霜で覆われるという、不思議な力を持つそのおじいさんが案内してくれたのは、冬王さまのお城。ウッレが氷の玉座の冬王さまにていねいにあいさつをして城の奥へ進むと、ラップランドのおじいさんやおばあさん、小さな子どもたちがスキー靴を作ったりスキー用の靴下を編んだり、クリスマスの贈り物を仕上げるのに大忙しです。休み時間になると、ウッレは子どもたちと外へ飛び出し夢中で遊びました。白霜じいさんが

「Did you enjoy yourself?
(たのしかったかい?)」

と聞くと、ウッレは

「I've never had so much fun in my life!
(ええ、こんなたのしいことって、ぼく、今まで知らなかったよ)」

「I thought you would.
(そうだろうとも)」

と白霜じいさんは満足。楽しい時間はあっという間に過ぎるのでした。

 夜が長く、日が差すのは短時間の北欧の冬。子どもは雪に親しみ、冬の神秘や喜びを感じながら過ごします。作者のベスコフは、自然や季節の変化をあらわす人物(白霜じいさん、冬王さま、雪どけばあさん、春の王女さまなど)を登場させ、冬の訪れから春の始まりまで、季節の移り変わりの喜びを描いています。

 お話の舞台のラップランドはノルウェー北部から白海までの沿岸地帯で、サンタクロースが住んでいるといわれます。また先住民族のサーミ人の伝統衣装を絵本の中の子どもたちに見ることができます。近ごろ北欧雑貨が人気ですが、この絵本で北欧の自然や文化を感じてみてはいかがでしょう。

 ラボ・パーティ講師 佐藤暁子

 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。

2022年12月号・Me&Youより