「カムイの大地 北海道と松浦武四郎」 幕末の蝦夷地、「友」との交流 

 
岩崎書店 1650円

 江戸(えど)から明治に変わる動乱(どうらん)の時代、未知の土地だった蝦夷地(えぞち)(今の北海道)を歩き、見聞きした自然や文化を本にまとめて、世に知らせた人物がいました。松浦武四郎(まつうらたけしろう)です。その後、彼(かれ)はこの実績(じっせき)を認(みと)められて、幕府(ばくふ)から蝦夷地の地理を詳(くわ)しく調査(ちょうさ)するよう命じられました。開拓(かいたく)を進めるために必要だったのです。

 6度にわたる蝦夷地の探査の中で武四郎が心を痛(いた)めたのは、昔からそこに住み独自(どくじ)の文化を持つ、アイヌの人々への過酷(かこく)な差別と抑圧(よくあつ)でした。彼は蝦夷地に移(うつ)り住んだ和人の多くとは異(こと)なり、アイヌの人々を友とし、アイヌの人々も彼のことを「松浦ニシパ(男性(だんせい)に対する敬称(けいしょう))」と呼(よ)んで信頼(しんらい)を寄(よ)せたのでした。

 史実(しじつ)に沿(そ)いつつ、狼(おおかみ)の化身である少年やアイヌの人々との交流が劇的(げきてき)に描(えが)かれ、読み応(ごた)えも十分。好奇心(こうきしん)と行動力にあふれ、偏見(へんけん)にとらわれない武四郎は幕末(ばくまつ)の偉人(いじん)の一人ではないでしょうか。「蝦夷地」を「北海道」と改めたのも武四郎でした。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています