「しあわせなときの地図」 大好きな町、戦争で追われ

 
ほるぷ出版 1760円

 戦争によって、家族と共に外国へ逃(に)げなければならなくなった少女ソエ。町を出る前の晩(ばん)、広げた町の地図に10年間の楽しかった思い出の場所を記すことを思いつきます。大好きだった自分の家、学校、図書館など。幸せな時をくれた場所を線でつなげてみると、そこにある文字が現(あらわ)れて...。

 この本の表紙は、抑(おさ)えた色調の水彩(すいさい)で描(か)かれた美しい絵地図。繊細(せんさい)なタッチで郷愁(きょうしゅう)を感じさせる、ソエが見ていた町の地図です。

 その町をソエは追われます。当たり前の生活、日常(にちじょう)を奪(うば)われてしまうのです。残念なことに、今この地球上でソエと同じ思いをしている人々がたくさんいます。ウクライナやパレスチナ、アフガニスタンやシリアに...ソエたちが、元居(い)た場所に戻(もど)れるように、安心して暮(く)らせるようにと願ってやみません。

 最後に記される作者の願いは、アンネ・フランクが日記に書いた希望の言葉に込(こ)められています。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています