「えすがたにょうぼう」 殿さまと百姓、痛快民話

 
文・今江 祥智、絵・赤羽 末吉「えすがたにょうぼう」 BL出版 1650円

 「とんとんむかし、ある村に門太(もんた)という働き者の百姓(ひゃくしょう)の若者(わかもの)がおった。気が弱く、なかなかにょうぼうをもらうことができなかったが、ようやく夕顔の花のような美しいにょうぼうをもらうことができて...」

 この民話は、働き者で気が弱い百姓の男が、殿(との)さまから愛するにょうぼうを取り返すという話です。それも殿さまをだますのではなく、にょうぼうの好きな「しばぐり」を城に売りに行っただけで、にょうぼうを取り返すことができ、それから二人はのんびりと静かにくらしましたとさ。なかなか痛快(つうかい)な民話ですね。

 絵は日本人で初めて、国際(こくさい)アンデルセン賞(しょう)画家賞を1980年に受賞した赤羽末吉(あかばすえきち)。日本画家の手による絵が、この話によく合っています。きれいなにょうぼうの顔は、観音さまのお顔のようです。テンポの良い文章は、児童文学作家、翻訳(ほんやく)家の今江祥智(いまえよしとも)で「説教臭(くさ)さがなくいつまでも語られる大好きな民話です」と解説(かいせつ)に記しています。大人もぜひ。(佐)



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