「夜空にひらく」 17歳の更生、花火師手助け

 
アリス館 1760円

 鳴海円人(なるみえんと)、高校3年17歳(さい)。傷害罪(しょうがいざい)で家庭裁判所(さいばんしょ)へ送致(そうち)、補導委託(ほどういたく)先での生活を一定期間観察し、少年院送りか保護(ほご)観察処分(しょぶん)かを審判(しんぱん)する試験観察処分となる。口数少なく無愛想な円人だが、決して素行(そこう)が悪い少年ではない。

 6歳から祖母(そぼ)と2人暮(ぐ)らし、経済(けいざい)的な問題はなかったが、祖母がきつい性格(せいかく)だったため円人は早く自立したいと願っていた。

 補導委託を引き受けた煙火店(えんかてん)を営(いとな)む花火師(はなびし)深見静一(ふかみせいいち)のもとで、寮母(りょうぼ)役の母親まち子、職人(しょくにん)の双子(ふたご)兄弟と円人の生活が始まった...。

 円人が煙火店の人々との生活で、自分の居場所(いばしょ)を見つけてゆく更生(こうせい)物語。ある事故(じこ)の被害者(ひがいしゃ)家族である深見が、加害者の更生を助けていることで、家族の複雑(ふくざつ)な思いをリアルに描(えが)いているのがみごとです。

 重い内容(ないよう)ではあるけれど、舞台(ぶたい)が煙火店だけあって、花火の作り方や、打ち上げから6秒足らずで夜空にひらき消える色彩豊(しきさいゆた)かな花火の描写(びょうしゃ)に癒(い)やされます。中学生から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています