「子ぎつねと音のなる石」 旅で出合った石の楽器

 
あかね書房 1430円

 まだランプを使っている家があったころのお話です。若(わか)い音楽家のジンは、曲を作り演奏(えんそう)しながら気ままに旅をしていました。

 ある四国のいなか町でのこと。ジンが小さな宿で、作ったばかりの歌を歌っていると、いつの間にか、ゆかた姿(すがた)の小さな女の子が、庭の石に腰(こし)かけて夢中(むちゅう)で聴(き)いていました。一緒(いっしょ)に演奏(えんそう)しようというと、女の子は喜(よろこ)んで一つの石を持ってきました。その石を打ってみると、「カーン」というかたく澄(す)んだ音が。それは、形を整えて工夫をすれば自然の楽器にもなる「カンカン石」でした。

 このお話は、不思議な石にまつわるやさしいファンタジーですが、実際(じっさい)に、この石は香川県などで採(と)れ、「讃岐岩(さぬきがん)」、「サヌカイト」と呼(よ)ばれているものです。ジンは、この石を木箱に糸でとめて楽器にしましたが、今では「琮(そう)」という楽器が作られ、演奏する音楽家もいるそうです。聴いてみたいですね。かたく澄んだその音色を。低学年から。(稲)

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています