「Fukushima50」リレーメッセージ(12)富田靖子さん

 
 とみた・やすこ 福岡県出身。映画デビュー作「アイコ十六歳」で日本アカデミー賞新人俳優賞、「あ・うん」で同賞優秀助演女優賞に輝き、「南京の基督」では東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。NHK朝ドラ「スカーレット」ではヒロインの母親を好演した。

 「Fukushima50」の最初の方に「事実に基づく作品である」とテロップが出ました。

 事実に基づく...この言葉の重さに息ができませんでした。

 2011年3月11日のあの日、自宅で食器棚を押さえながら、右足には3歳の娘がしがみついていました。あの時のことを覚えているかと尋ねると、「覚えている」と即答します。9年という時が流れても、覚えています。

 しかし、映画の中で出てくる「ベント」「メルトダウン」という単語はニュースで知っていたものの、それが何を意味するのか、福島で何が起きているのか、私は、知っていたつもりでも、本当は何も知りませんでした。「Fukushima50」を見て、事実に基づくこの作品を見て、あの日のことを改めて痛みを持って、深く感じることができたように思います。

 もうすぐ、あれから10回目の桜が咲きます。皆さんの古里に、本当の春が来ることを心より願っています。