【まんじゅう麩】県北の一部 お盆の飾り

 
お盆の直前、店頭の目立つ場所に線香などと共にたくさんの「まんじゅう麩」が並ぶ=伊達市・ヨークベニマル伊達店

 少し前の話で恐縮だが、毎年夏になると、県北のスーパーやホームセンターのお盆用品コーナーで、丸いもなかのようなものが売られているのを見掛ける。県中から越してきた身としては、何に使うものなのか、どうやって食べるものなのか、ずっと謎だった。そこで、今回調べることにした。

ルーツは宮城?

 お盆を目前に控えた8月某日、伊達市のスーパーへ。店に入るや否や、例の「もなか」が目に飛び込んできた。入ってすぐの場所に作られたお盆用品コーナーに、線香や供物などと共に、たくさんつるされていたのだ。1袋手に取ってみると、もう1袋付いてきた。ひもでつながれている。2個一組で使うらしい。

 表示を見ると商品名は「まんじゅう麩(ふ)」、製造場所は宮城県白石市とある。もなかではなく麩の仲間らしい。ドラッグストアやホームセンターでもまんじゅう麩を見つけたが、いずれも製造場所は同市もしくは同県大崎市だった。どうやら宮城県南部にルーツがありそうだ。

 パッケージに書かれていた白石市の村上製麩店に話を聞いた。代表の村上憲二さん(73)によると「父親の代(戦前)から作っていて、由来などは分からないが、当時からホオズキなどと一緒に盆棚に飾っていた」と言う。さらに、「お盆にまんじゅう麩を飾るのは宮城県内でも南部(白石市から名取市辺りまで)の風習で、仙台市では飾らない。福島県でも伊達から福島市の北部までなのでは」と推測する。

終われば料理に

 以前、紙面で情報を募集したところ、それを裏付ける証言が寄せられた。福島市の60代女性「ふーちゃん」によると、生まれ育った同市南沢又では飾っていたが、現在住んでいる同市南部では飾っていないという。

 ほかにも福島市や伊達地域に住む人たちに聞くと、県北の一部地域で仏壇のある家庭では、お盆の飾りとして一般的だという。また、昔はお盆が終わると、まんじゅう麩はほかの供物と一緒に川に流していたという証言もあった。

 そのことを村上さんに尋ねると「今は川に流せないから、製造者としては捨てずに食べてほしい。そのために食べ方を袋に記載している。20~30年前からビニール袋に入れて販売するようになり、お盆の間飾っておいても線香の匂いが付かないので、おいしく食べられる」と教えてくれた。

 袋には「一口大に切り、水に浸し、お吸い物や酢の物に」と書かれていた。村上さんによると、青森県ではまんじゅう麩を盆飾りとしてではなく、食品として通年販売しているそうだ。

 記者の机の横には、冒頭で購入したまんじゅう麩が今もつるしてある。賞味期限もまだまだ先だ。麩を使った料理を作った経験はないのだが、この機会に挑戦してみようと思う。(佐藤香)