仮設住宅で育んだ「絆」 相馬総合のバッテリー、息の合った投球

 
6年間バッテリーとして共に歩んだ相馬総合の脇坂(右)と大和田=9日、ヨーク開成山スタジアム

 仮設住宅での出会いから生まれたバッテリーが最後の夏に挑んだ。相馬総合のエース脇坂晃生(3年)と捕手の大和田陸(同)は9日、夏の高校野球福島大会1回戦に臨み、6年間で培った息の合った投球で第5シードの田村と渡り合った。

 2人の出会いは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きた2011年。脇坂は南相馬市小高区から避難し、新地町の仮設住宅に住み始めた。そこで「同じ学年の子がいる」と聞く。その子が同市原町区から避難した大和田だった。

 脇坂から野球に誘い、所属する小学校もチームも違ったが、2人は仮設住宅の敷地内でキャッチボールを繰り返すようになった。

 再会した尚英中(新地町)でバッテリーを組み始めたが、脇坂は当初、捕手が大和田であることにこだわりはなかった。ところが試合を重ねたり、学校で話し込んだりして信頼関係を築き上げていくうちに「大和田じゃなきゃ駄目だ」と気付く。大和田も「意思疎通は他の人よりもできている」と自負するほど仲を深めた。

 郡山市のヨーク開成山スタジアムで迎えた初戦。実力校の田村を相手に「自分の構えたところに決まっていた」と大和田が話すように、カットボールを中心とした脇坂の投球がさえた。

 打っては、同点で迎えた八回表、2死満塁で大和田が勝ち越しの2点適時打を放ち、塁上でガッツポーズを見せた。脇坂も「自分のことのようにうれしかった」と気持ちが高ぶった。

 しかし、直後の守備で満塁のピンチを招くと、高めの直球を痛打され、逆転を許した。勝ち星は逃したが、6年間の集大成をぶつけた2人。エースが「勝ちたかったが、楽しく終われた。『今まで一緒に頑張ってくれてありがとう』と言いたい」と言葉を投げかけると「チームをもり立てようと頑張ってくれた。感謝しかない」と応じた女房役。震災を乗り越え、共に歩んだ相棒同士の強い絆を確かめ合った。(津村謡)

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