聖光学院エース・須藤「仲間信じ最後まで」 粘りの熱投109球
1点差の最終回。きっと追い付いてくれる。そう信じ、聖光学院先発の須藤翔(3年)は投球の練習を続けた。しかし再びマウンドに上がることはなかった。甲子園で投じた109球。エースの粘りの投球は勝利に結び付かなかった。
「仲間を信じて投げるだけ」。いつもと同じように、落ち着いた表情で甲子園のマウンドの土をならし、短い掛け声を出しながら吉田修也(同)のミットに投げ込んだ。
先制点を与えても焦るそぶりはなかった。「打たれることは想像していた。野手が取り返してくれる」。左打者にはスライダーを多用し、後半は落ちる球で三振を奪った。得点は奪われても持てる球種、投球術を駆使して後続を断ち切った。
昨年はメンバー入りしたが立つことができなかった甲子園のマウンド。福島大会後、「投げたい気持ちもあるが、自分の気持ちだけでチームを負けさせてはいけない」と須藤は話していた。一投一打に歓声が沸く高校野球の聖地で投げることは、須藤にとってあこがれよりも覚悟の重さの方が勝っていたのかもしれない。
最後の夏、そのマウンドで自分の全てを懸けて役割を果たした。「甲子園で思い描いたものができた。自分を出し切った」と須藤は言い切った。仲間を信じ、全力を投じた背番号1の目に涙はなかった。