高校球児『無念』...夏の甲子園中止 福島県内指導者も言葉失う

 
普段と変わらない練習で部員を指導する聖光学院の斎藤監督(左)

 高校球児の憧れの舞台「甲子園」の中止が決まった20日。この夏に懸けてきた県内の高校球児は悔しさをにじませ、指導者も言葉を失った。関係者からは3年生の思いを成就する舞台を求める声が上がっており、県高野連は独自の代替大会の開催に向けて検討する。

 昨年まで、戦後最長の13年連続で夏の甲子園大会に出場していた聖光学院。緊急事態宣言の解除に伴い20日から全体練習を再開した。小雨の中、久しぶりの練習に汗を流す球児たちの姿があった。その数時間後、夢舞台の中止の一報がもたらされた。

 「心の準備はしていた」。報道陣の前に立った内山連希主将(3年)は、静かに語った。しかし「小さい頃から夢見ていた舞台。仕方ないと思うが複雑な気持ちもある」と、心の内を明かした。斎藤智也監督は「受け止めるしかないが、今年の3年生だけが甲子園へのチャレンジ権がないのが本当にかわいそうだ」と気遣った。

 学法石川はミーティングを開き、佐々木順一朗監督が部員に大会中止を伝えた。仙台育英で春夏通じて甲子園に19度出場している指揮官は「甲子園はなくなったが目指した日々はなくならない」と語り掛けた。部員たちには日頃から「運命を愛し、希望に生きる」という言葉を伝えてきた。高橋大輝主将(3年)は「卒業まで他のチームに心で負けない」と気丈に振る舞った。

 各校の選手や指導者からは改めて、甲子園への特別な思いが寄せられた。尚志の佐藤圭悟主将(3年)は「甲子園は支えてくれた人への感謝を伝えられる場でもあると思ってきた」と語った。夢の切符を勝ち取るためふるさとの神奈川県を離れ、学法福島で野球に打ち込んできた印部颯汰主将(3年)は、昨年秋の県大会を53年ぶりに制していただけに「甲子園が見えてきていたところだったのに」と悔やんだ。

 夏の甲子園に7度出場した日大東北の宗像忠典監督は、甲子園に出場しプロ野球や大学野球での活躍を夢見る選手もいることから「今後については選手と話して決めたい。できることはしたい」と部員の将来に考えを巡らせた。

 福島県内指導者「心の整理つける機会を」

 指導者からは「子どもたちが心の整理をつける機会をつくってほしい」との意見が多く、県高野連が検討している独自の代替大会の方向性が注目される。

 ふたば未来の遠藤太監督は「3年生が高校野球に区切りをつけられるよう県レベルでも何らかの形で試合をする機会を与えてほしい」と訴える。

 また、小高産業技術の広瀬修一監督は、グラウンドから威勢良く響く部員の声や球音は地元住民にとって元気の源と感じている。「上につながる大会でなくても、野球をやらせてあげたい」と話す。

 部活動が休止中の喜多方の星京佑主将(3年)は自宅が近い部員同士で集まり、キャッチボールなどを行った。「県大会がどうなるか分からないが3年生5人、引退が決まるまでは今まで通り練習していくだけ」と再び球音が戻る日を待ち望んでいた。

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