球数制限「残り12球」聖光エース・佐山、涙の降板 5試合で熱投

兵庫県西宮市の甲子園球場で20日に準決勝2試合が行われた第104回全国高校野球選手権大会第13日。福島県代表の聖光学院は4―18で仙台育英(宮城)に敗れた。仙台育英は夏は7年ぶり3度目の決勝進出で、東北勢として春夏を通じて初優勝を狙う。
【評】聖光学院は序盤で想定外の大量失点を許し、理想としていたロースコアの接戦に持ち込めなかった。初回のピンチをしのぎ、その裏1死一塁でエンドランが成功。続く三好の左前適時打で先制したが、なお1死満塁の好機は併殺でこの回1得点にとどまった。直後の2回は無死二、三塁のピンチを迎え、内野手が前進守備を敷いたが、弱いゴロが一二塁間を抜けて同点。さらに連続適時打で逆転され、2番手の佐山も勢いを食い止められず、一挙11点を奪われた。追い込まれてもファウルで粘り、甘い球を逃さない仙台育英に計19安打を浴びた。点差が広がり、犠打や機動力を絡めた持ち味の攻撃を展開できず、堅守も生かせなかった。(鈴木健人)
信頼し合うバッテリー、互いに「ありがとう」
試合途中にも関わらず、規定でマウンドを降りなければならない時が近づいていた。
聖光学院のエース佐山未来(3年)は2回途中から登板。序盤に大量失点を許す苦しい展開だったが、4、5回は無失点で切り抜ける意地を見せた。だが、6回表終了時、14日の2回戦から数えた1週間の投球数が488球に達した。500球までと定められた投球数の上限まであと12球に迫っていた。
春夏通じ初の甲子園4強進出の立役者となった絶対的エース。「絶対に抑える」と腕を振ったが、ここまで4試合全てに登板し、そのうち2試合を完投している疲労は隠せなかった。最速142キロの直球はこの日は120キロ台後半から130キロ台前半が大半を占め、低めの変化球を見切られた。厳しいコースはファウルで粘られ、四死球で出した走者を適時打で返された。流れを止めることができず、3回までに8失点を喫した。
6回裏の攻撃で代打を送られ、バッテリーを組む捕手山浅龍之介(同)が声をかけてきた。「バッテリーを組めてよかった。ここまで頑張ってくれてありがとう」。その言葉に涙が止まらなかった。
「相手の分析は全て山浅に任せている」と話していた佐山。試合中、山浅のサインに首を振ることはほとんどない。山浅も佐山の意図をくみ取った配球で、持ち味のテンポの良い投球を引き出してきた。信頼し合う2人。最後は「ありがとうという感謝しかない」と口をそろえた。
「日本一」という高校野球での夢は途絶えたが、右腕の挑戦は終わらない。「大学で成長し、絶対プロ野球選手になる」。幼いころからの夢を叶えるために、新たな山を駆け上がっていく。(熊田紗妃)
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