【挑戦・東京五輪】自転車女子ロード・金子広美 40歳、いまが満開

 
東京五輪での活躍を誓う金子広美(日本自転車競技連盟提供)

 遅咲きのヒロインが東京を駆け抜ける。自転車女子ロードレースの金子広美(イナーメ信濃山形、白河二高卒)は、40歳にして初の五輪を迎える。「今も成長を感じている」。20代で始めた競技の集大成を自国開催の五輪で見せる。

上り坂の女王

 自転車を始めたのは24歳の時だった。きっかけは夫哲志さん(49)の趣味だったマウンテンバイク。哲志さんが出場する大会に応援に来たものの、スタート後は姿がほとんど見えなくなった。帰りの車中で口論に発展し、運動の経験はほとんどなかったが、マウンテンバイクを買って一緒に大会に出るようになった。

 「我慢強い性格」が競技性に合い、特に上り坂では無類の強さを発揮した。次第に出場する大会で結果を残すようになり、いつしか「ヒルクライムの女王」と呼ばれるようになった。会津美里、下郷両町を結ぶ氷玉(ひだま)峠を舞台にした「時空(とき)の路(みち)ヒルクライムin会津」でも連続優勝した。

忍耐力は抜群

 本格的に競技にのめり込み、上り坂だけのヒルクライムから長距離を走るロードレースへと転じた。強化指定選手にも選ばれ、2016年にはリオデジャネイロ五輪の出場枠を争うアジア選手権に出場。リオ五輪代表こそ逃したが、18、19年の全日本選手権で続けて準優勝し、自国五輪代表の座を手繰り寄せた。競技に取り組む金子を一番近くで見てきた哲志さんは「身体能力というより、努力できる集中力、忍耐力がすごかった」とたたえた。

 宮城県の出身で、高校から結婚までを西郷村で過ごした。時折、練習を兼ねて帰省する。ある時の練習では白河市を出発して猪苗代湖を1周し、100キロ以上の道のりを走った。「自然がいっぱいあって、走っていて癒やされる」

 金子は今、長野県に練習の拠点を置く。三重県在住だが、高地トレーニングの環境を求めて19年末に単身で移り、練習を重ねる。延期となった1年間を課題とするスプリントの強化に充て、一人トレーニングを続ける。

 残り1カ月を切った本番を前に金子は「今が一番強いかもしれない」と自信をのぞかせる。東京五輪の女子ロードレースは総距離147キロ、高低差2692メートルにもなる難コースで行われる。40歳でつかんだサクセスストーリーをさらに輝かせるため、金子はもう一段階ギアを上げる。

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