五輪開会式、つなぐ「エール」 小針さん、選手先導役

 
「プラカードベアラー」の当選通知書を手に、「五輪に携われなかった人たちの思いを受け止め、役目を果たしたい」と意気込む小針さん

 23日の東京五輪開幕まで1週間に迫った。国立競技場で行われる開会式では、大天狗酒造(本宮市)の杜氏(とうじ)、小針沙織さん(33)が参加国・地域の選手団の先導役(プラカードベアラー)を務める。本県でも試合が行われる野球・ソフトボール競技など、大半が無観客開催となった異例の五輪。小針さんは「五輪に携われなかった人たちの思いを受け止め、開会式で自分の役目をしっかり果たしたい」と決意を語る。

 小針さんは、日本コカ・コーラ(東京)の募集に応募し、大役が決まった。応募のきっかけは、2019年の東日本台風(台風19号)で被災した際に受けた、多くの支援や励ましの声だった。本宮市は阿武隈川が氾濫し、多くの家屋が浸水する被害を受けた。

 先行きの見えない状況の中で、応援が誰かの前を向く力になり、その人が頑張る姿が別の誰かの励みになっていった。災害を通して「エール」が連鎖していく様子を目の当たりにした。「選手が力を発揮し、多くの人に勇気や希望を与える活躍ができるように、自分がもらった応援を少しでも選手のためにつなげたい」。応募に迷いはなかった。

 3月に県内からスタートした聖火リレーでも本宮市で聖火ランナーを務め、五輪に関わる大役は2度目となる。「自分もつないだ聖火が開会式で聖火台にともる瞬間に立ち会うことができるのは本当に光栄な機会だ」と語る。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、本県での野球・ソフトボール競技が無観客開催になるなど「素直に喜べない部分もある」と漏らす。

 頭に浮かぶのは、「復興五輪」のため準備してきた県内の関係者や観戦を楽しみにしていた人、ボランティアとして関わる予定だった人たちの気持ちだ。「自分一人では受け止めきれないかもしれないが、五輪に関わりたくても関われない人たちの思いを忘れない」と、小針さんの言葉に覚悟がにじむ。

 小針さんは16日から8日間、都内でリハーサルなどに臨み、本番を迎える予定だ。「各国の選手団が日本に、福島に来て良かったと思えるような開会式にしたい」と力を込めた。(佐藤智哉)

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