【あづま球場・開幕戦ルポ】無観客の祭典にも「遺産」の礎

 
グラウンドに整列して開幕戦に臨むソフトボールの日本代表とオーストラリア代表=21日午前、福島市・あづま球場

 静かな幕開けだった。あづま球場で行われたソフトボールの日本―オーストラリア戦。日本のエース上野由岐子の13年ぶりの五輪のマウンドにも、日本代表の3本塁打にもスタンドからの歓声はなく、「復興五輪」はひっそりと始まった。

 ボールがグラブに収まる乾いた音や、選手の掛け声。無観客だからこそ聞こえる音が球場に響いた。有観客が想定されていたあづま球場は一転して無観客となった。スタンドには座席番号の目印が残ったままで、二転三転したコロナ禍の五輪を強く印象付けた。

 取材でたびたび訪れ、慣れもあったせいか入場前の高揚感は少なかった。ただ、外野に描かれた五輪マークや英語のアナウンス、各国の関係者が行き交う「非日常」を目の当たりにし、特別な五輪が本県で始まったとの実感が湧いてきた。

 無観客でもボランティアや報道機関など多くの出入りがある球場では感染症対策の徹底を求められたが、手指の消毒などいずれも「日常」に行われているものだった。声援なきスポーツの祭典を前に、レガシー(遺産)が残るのか不安を抱える中で、鮮やかに咲くアサガオの鉢植えに目が留まった。福島市の小学生が育て、手書きのメッセージが添えられていた。「せかいのみんなのおうえんでオリンピックをもり上げよう」。そのメッセージにレガシーの礎を感じた。(折笠善昭)

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