一生忘れられない時間に 被災3県の子ども聖火つなぐ

 
開会式を振り返り「次は選手として五輪の舞台に立ちたい」と誓う青木さん(右)と記念のトーチを手に「将来は五輪で活躍する」と誓う中沢さん

 東京・国立競技場で23日夜に行われた東京五輪の開会式で聖火をつないだ東日本大震災被災地の子どもたち。本県から参加した青木心那(ここな)さん(14)=いわき市、藤間中3年、中沢蓮さん(12)=郡山市出身、広野中1年=は、東北の復興や自身が打ち込む競技への特別な思いを込めながら、夢の舞台を走った。

 次はプレーで希望与える

 【藤間中3年・青木心那さん】「福島の子どもたちの思いを背負うつもりで感謝して走った。被災地で前向きに頑張っていることを世界に知ってもらえたかな」。青木心那さんは復興発信の強い思いを胸に大舞台に臨んだことを明かした。

 走った距離はわずか数十メートル。しかし、一生忘れられない時間となった。各国の一流選手が集う熱気の中、岩手、宮城の子どもたちと共にゆっくりと歩みを進めた。目の前で聖火台に点火された瞬間、思わず鳥肌が立った。「自分はすごい場にいるんだ」

 3月の全国都道府県対抗全日本中学生女子ソフトボールで、福島選抜の主将としてチームをまとめ、気持ちを強く持って戦う重要性を知った。その経験が、堂々とした聖火リレーにつながったという。

 本県で五輪のソフトボール競技が開催されたことが大きな刺激になっている。遠い存在だと思っていた日本代表が身近な場所で活躍する姿に「自分も活躍したいという気持ちになった」という。そして、開会式で夢舞台に触れたことが、五輪出場を現実的に思い描くきっかけになった。中学卒業後は県内の強豪高校に進学し夢を追い掛けるつもりだ。「次は選手として五輪の舞台に立ちたい」。今度はプレーで希望を与える側に立つ―。そう強く決意した。

 いつか自分も日本代表に

 【広野中1年・中沢蓮さん】東北に元気を届けたい―。サッカー選手育成機関「JFAアカデミー福島」に所属する中沢蓮さんは、復興へ歩む古里の住民を勇気づけようと、無人の観客席に大きく手を振りながら国立競技場を駆け抜けた。

 最終聖火ランナーを務めることを知らされたのは開会式を目前に控えた20日。式への参加は5月に決まっていたが、中沢さんは「事前に何をするのかは全く分からなかった。大役を務めることになって驚いた」と振り返る。

 本番では、東京パラリンピックに出場するトライアスロン女子の土田和歌子選手から聖火を受け継いだ。被災地の子どもたちと一緒に数十メートルを走り、テニス女子の大坂なおみ選手に聖火をつないだ。

 中沢さんは今年4月に震災、原発事故から10年ぶりに本県で活動を再開したJFAアカデミー福島に16期生として入校。欧州の強豪チームでプレーするという夢を抱き、広野町で寮生活を送りながらJヴィレッジの周辺施設などで技術を磨いている。

 開会式では、バスケットボール男子の八村塁選手ら日本選手団の姿を間近に見て胸が高鳴った。「五輪に出場したいという気持ちがより強くなった」。将来はサッカー日本代表として再び五輪の開会式に臨み、活躍すると誓う。

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