ひとり親「現状知って」 新型コロナ感染拡大の長期化で生活苦

 
県内の公園を子どもと並んで歩く林さん(中央)と家族。ひとり親家庭の生活は困難な状況が続く

 新型コロナウイルス感染拡大の長期化で、ひとり親世帯の生活がより困難なものになっている。勤務時間の減少や解雇などで収入が不安定になることが原因の一つだ。衆院選で各党が支援拡充を訴える中、当事者からは「現状をもっと知ってほしい」との声が上がる。

 「貧乏って嫌だね」。県北地域で小学5年の長男(10)と1年の長女(7)を一人で育てる林香澄さん(33)=仮名=は、数カ月前に聞いた長女の一言が忘れられないでいる。ゲームの課金をせがむ長女、それを断る母親。当時は失業中で娘の願いに応える余裕はなかった。「ほかの子と違って、ウチはお金を使ってあげられない。申し訳ない思いしかなかった」

 コロナの感染が拡大する前は、電子製品の製造工場で派遣社員として働いていた。毎月の給与は手取りで14万円前後だった。それが昨年5月に一変した。「今日で終わりだから」。会社から突然解雇を告げられた。予感はあったが、それが現実になると、生活への不安が大きくなった。

 短期の仕事を2カ月した後は職業訓練を受け、毎月10万円程度の失業手当が頼り。母親や姉から服をもらい、節約のため食事の量も減らした。子どもがいない昼はカップ麺1個で過ごし、「出費を減らせるところは減らしたい」と、それすら口にしないこともある。

 今春、ようやく新たな仕事を始めた。しかし契約期間は1年。来春には再び岐路に立たされる。先の見えない状況は変わらない。ひとり親世帯への国の特別給付金は、生活費と子どものための貯蓄に回した。「給付金はありがたいけど、一時的なもの。この先も生活はずっと続いていく。安定した収入が得られる就職先がほしい」

 林さん同様、生活苦に悩むひとり親世帯は多い。県内で支援などに取り組むNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福島」(郡山市)が2020年に行ったひとり親世帯への食料などの支援は、19年の197件から946件に増加した。21年も9月末までで587件あった。支援には限りがあり、全ての人には対応できないという。遠野馨理事長は「住んでいる地域によって支援がばらばら。住んでいる地域にかかわらず、統一の支援が受けられるようにしてほしい」と訴える。

 また、首都圏で同様の支援を行うNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都千代田区)が4月に行った調査(回答数約2300)では、母子家庭の約6割が「収入が減少」と回答し、約4割が「家族や自分の食事の回数を減らす」と答えた。「コロナを契機に業種を転換しなければならないひとり親への支援をきめ細かく行う必要がある」。同NPOの赤石千衣子理事長はそう指摘した上で、子どもの学習の遅れや進学への影響などにも懸念を示す。