【1位】処理水海洋放出開始  目立ったトラブルなし

 
放水設備を通り、海へと放出される処理水(東京電力提供)

 読者が選ぶ福島民友新聞社の「2023県内十大ニュース」は、8月に始まった東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出が1位となった。県内十大ニュースを通して今年1年を振り返る。

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 東京電力は8月24日、福島第1原発でたまる放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出を始めた。設備面や運用面で目立ったトラブルは発生しておらず、東電などが行う周辺海域のモニタリング(監視)でも異常は確認されていない。

 漁業関係者らを中心に放出に伴う風評被害を懸念する声があったが、ふるさと納税の寄付額増加や、海産物の積極的な購入など応援の輪が広がった。一方、中国など一部の国は日本産海産物の輸入を停止した。

 第1原発では保管容量の98%に当たる約134万トンの処理水が保管されていた。政府は、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなど今後の廃炉作業を見据え、処理水を保管しているタンクを解体することで敷地を確保するため、放出開始に踏み切った。

 東電は、トリチウム濃度を国の基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1(同1500ベクレル)未満まで海水で薄めた処理水を、延長約1キロの海底トンネルを通じて放出している。2051年までに完了させる計画だ。