「請戸の親子船」再出発 小松さん念願の進水式、完成直前に津波

 
船主の小松さん(右)と長男諒平さん(写真上)12年を経て完成し、進水式を迎えた小松さんの新造船=1日、南相馬市鹿島区・真野川漁港

 請戸漁港(浪江町)の漁師小松修一郎さん(64)の新しい船が完成し1日、進水式が南相馬市鹿島区で行われた。本来は2011年6月に進水式を迎えるはずだったが、東日本大震災の津波で完成直前に流され「幻の船」となっていた。昨年から新たに造船を始め、12年を経ての門出となった。小松さんは「やっと願いがかなった。震災前の水揚げ量を目指して頑張らなければ」と決意を新たにした。

 進水式を迎えたのは全長19メートル、重さ6.6トンの小型船「效漁丸(こうりょうまる)」。小松さんと長男諒平さん(40)の親子2人で刺し網、船引き網漁などに挑み、シラスやトラフグ、カレイ、コウナゴなどを漁獲する。

 11年に造船中だった船は津波により工場から3キロ先の内陸まで流される悲運に遭った。小松さん一家も東京電力福島第1原発事故で浪江町から相馬市に避難を余儀なくされたが、諒平さんは「ここで諦めたら福島の漁業は駄目になる。船はまたいつか造れるはずだ」と信じて再起を模索した。

 小松さん親子が所属する相馬双葉漁協は、震災と原発事故の影響で落ち込んだ水揚げ量の回復に向け、国の助成制度「がんばる漁業復興支援事業」を活用し、新しい船を段階的に導入して機能の底上げを図る方針だ。

 效漁丸は制度が適用された小型船の第1号となり、昨年10月に鹿島造船(南相馬市鹿島区)で造船が始まった。建設費1億4千万円の2分の1が支援される。

 進水式では小松さん親子を乗せた船が海へと滑り出した。小松さんは「ここまで長かった。でも我慢して良かった」と感慨深げに話した。船は4日、大漁旗を掲げ、請戸漁港に向かう。出漁は6月1日の予定だ。