「パパ、重圧に気づいて」...ママだけ育児、終わりに

 
横尾さんは「夫に『家事をして』と言いにくい場合もある。自分たちの家庭にはどんな家事や子どもの世話があるのかを知ってほしい」と呼びかける

 女性の活躍推進へ男女平等の視点で社会の課題を議論する政府主催の国際女性会議「WAW!(ワウ!)2022」が3日、東京都で開かれる。地方における女性活躍の課題や防災、経済など議論のテーマは多彩で、二本松市にサテライト会場が設けられる。会議のテーマの中から、男性の関心拡大と、防災計画への女性参画について県内の取り組みを2回にわたり紹介する。

 「この本を読んで涙が止まらなくなった。ママだけが責任を負う世の中はもう終わりにしよう」

 福島民友新聞のおすすめ本紹介コラム「@BOOKカフェ」に6月、女性の切実な意見が載った。声の主は、郡山市を拠点に子育て情報発信やイベント企画を行う団体「しゅふコミ」代表の横尾恵美さん(39)だ。

 取り上げた本は「パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ!」(前田晃平著、光文社)。育児休業で子育てを経験し「男性が変わろうとしなければ社会は変わらない」と気づいた著者が、子育てを巡る男女格差についてまとめた。

 「ママの代弁を男性がしていることがうれしかった」と、横尾さんが振り返る。「ママは子どもの命を預かっている重圧でぎりぎりのところにいる。それをパパに気づいてほしい」。こうした子育て中の女性の思いを男性に伝えようと、しゅふコミは本年度、男女が協力して育児するための指南書「パパとママのこおりやま子育てバイブル」を作り、市の母子健康手帳と一緒に配布し始めた。

 冊子には小学校までの子の成長過程や育児中の母親の気持ちを載せたほか、新生児育児の1日の多忙さが分かる円グラフ、家事を「見える化」した「家事育児タスク表」などを収録した。「パパに本気でお願い」と題した記事では「指示待ちスタイルではなく、主体的に家事、育児を」とメッセージを発している。

 「昔は母親の後ろに親や地域コミュニティーなどの応援団がいたが、今は核家族で地域の支えもない。だからこそ、男性の育児や家事への参加が必要」と横尾さんは訴える。

 男性の育児休業取得の必要性も指摘し「育児未経験の男性が職場で『育休を取るか』と聞かれても判断できないだろう。この冊子をママと見て話し合ってもらうのが理想」と提案。雇用する側に向けても「この冊子で子育ての見通しを知ってほしい」と、働き方への配慮を求める。

 「大切なのは女性、男性双方の想像力。相手の立場に立つことは難しいが、この冊子を、その参考にしてほしい」と横尾さん。来年度以降は他市町村でも冊子を配布することを目指し、準備を進めている。

 福島県の共働き夫婦、家事時間で格差

 ジェンダー問題研究に取り組む上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が3月に発表した「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」によると、本県の共働き夫婦の家事・育児に使う時間の男女格差(ジェンダーギャップ)は全国4位。しかし1日の平均時間を見ると男性38分、女性208分と、大きな開きがあった。

 同指数は総務省の2016年社会生活基本調査に基づくが、最新の21年版調査では県内の男性の家事・育児時間は55分に増えた。一方、女性の家事・育児時間も243分に増えている。共働き世帯の1日平均の仕事時間は男性386分、女性は281分だった。