「The March of the Jizo」(かさじぞう) ―vol.07

 
作:中村とも子 訳:鈴木小百合 絵:本多豊国 吹込:服部幸子 ケイティー・アドラー ラボ教育センター(ラボ出版)価格:2,090円

 早いもので、師走の声が聞こえてきました。今年最後にお届けするのは、大みそかの晩の不思議なできごとを語る、日本の昔話『The March of the Jizo(かさじぞう)』です。

  雪の降るある年の暮れ。木こりのじいは木を売ったお金で正月の米や餅を買うために、町に出かけていきました。その途中、雪まみれの六地蔵さまに出会います。気の毒に思ったじいは、町に着くと木を売ったお金であみ笠を五つ買い、帰り道で六地蔵さまにかぶせ、家に戻りました。じいが米や餅を買わずに帰ってきた理由を聞いたばあはこう言います。

 「(じいさん、じいさん。そりゃよかった。)

 Gramps, Gramps. That was a nice thing to do.

 (おらたちはお湯のんで、ねるとしましょ。) We'll just drink some hot water and go to sleep.

 (六地蔵さまに正月させてやりましょ。) The Six Jizo can celebrate the New Year.」

 そしてふたりは床につきました。すると夜中に、外で何か音がするのでそっと見てみると、六地蔵さまがじいとばあの家をたずねながらやって来たのです。そしてたくさんの宝物やごちそうをじいとばあの前に積み上げ、お礼を言って帰って行きました。その後、じいとばあは安楽に暮らすのでした。

  お正月には、年神様を迎え新年の幸せを願う意味が込められています。じいとばあの家にやってきた六地蔵さまは、年神様を投影しているかのようです。日本各地にこのような昔話はありますが、このお話の原型は山形県に伝わるお話です。国語の教科書にも掲載されており、未来を担う子どもたちに伝承したい大切な日本の昔話のひとつです。

 海外の人々と交流する際には、自分の国の文化について紹介できるような知識をもっていたいものです。このような昔話を通して日本の文化を知り、さらには英語で昔話を紹介できたら、どんなにすてきでしょう。みなさまもじいとばあのように、心穏やかに、良いお年をお迎えください。  

 ラボ・パーティ講師 佐藤暁子 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。

2021年12月号・Me&Youより