「おおにしせんせい」 五感を育てる先生の話

 
講談社 1650円

 5年生になった僕(ぼく)たちの教室に、新しい担任(たんにん)のおおにし先生がやってきた。おおにし先生は男の先生で、なんだか少し変わってる。だって最初の授業(じゅぎょう)は国語なのに「今日は1時間目から6時間目まで図画工作。学校の中で自分の描(か)きたいところを描いてくるんや」「心が動くように、よーく見て描くんや」なんて言うんだ。僕たちは太い筆(ふで)1本と、パレット代わりのしたじきと、筆を洗(あら)うバケツを持って学校中に散(ち)らばった。僕が友だちと3人で選んだ場所は廊下(ろうか)だ。廊下なら茶色の絵の具を塗(ぬ)ったらすぐ終わるし、余(あま)った時間でちゃんばらごっこだ。でも、先生に「廊下は絵の具そのままの茶色かよく見てみ。触(さわ)ってみ」と言われた。僕は廊下を触って、耳と鼻を近づけてみた。すると...。

 人間は五感を使い、さまざまな実体験を重ねていくことで感性(かんせい)が育つと言われています。おおらかな絵と文も楽しく、絵本作家である著者(ちょしゃ)の原点を垣間(かいま)見るかのような作品です。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています