【平成21年】シーランカンス幼魚初撮影 アクアマリン『執念』の大発見

『生きた化石』と呼ばれるシーラカンスの生態を追い続けて―。アクアマリンふくしま(いわき市)などのシーラカンス調査チームは2009(平成21)年10月、インドネシア北スラウェシ州マナド湾内で生きた幼魚を世界で初めて撮影した。撮影に使った自走式水中カメラ(ROV)を操作した同館統括学芸員の岩田雅光さん(52)は「撮影できているとは思わなかった。大発見だった」と振り返る。
00年に開館した同館は、魚の中でも謎の多いシーラカンスを調査しようと01年、アクアマリンシーラカンス委員会を発足。05年から現地調査を開始した。
調査はROVを1日に何度も水中に入れて操作する撮影が中心で、1回の作業は30分から2時間ほどだという。シーラカンスがどこにいるか分からない状態のため、岩田さんらはひたすら作業を続けた。
すると09年10月6日、同湾内の水深161メートルの地点で、岩の小さな割れ目の中にいた幼魚を偶然にも撮影できていた。撮影に気付いたのは、調査後に映像を解析している時だったという。「小さくて、生まれてから時間がたっていないようだった」。ROVのレーザービームの推定計測では、大きさは31.5センチ。過去に捕獲されたアフリカシーラカンスの胎内で大きさ約30センチに育っている例が確認されており、まさに生まれたてとみられる幼魚だった。
いわき市で昨年11月に開かれた世界水族館会議では、安部義孝館長(78)がシーラカンスの研究について発表した。「地球誕生から46億年、いろいろな動物が生まれ、絶滅している。昔から姿の変わらないシーラカンスは、進化について教えてくれるかもしれない」と生態の解明に期待を込める。
だが発見から9年半がたった今も、シーラカンスの寿命や分布、繁殖行動など、不明なことは多い。今年3月にはシーラカンスの新種の化石が発見されていたことを発表するなど、岩田さんらの地道な研究は続く。「分からないことを解明するのは、人の興味の部分に訴えるものがある。水族館として、研究を進めていかないと、シーラカンスは『不思議』なままだ」。謎を解明するための意欲は衰えることを知らない。
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シーラカンス 恐竜などの生きていた時代に絶滅したと考えられていたが、1938(昭和13)年、南アフリカのイーストロンドンのチャルムナ川の沖で捕獲された。アクアマリンふくしまは幼魚の撮影に成功する前の2006(平成18)年にはインドネシアで生きたシーラカンスを撮影するなど、さまざまな研究活動を行っている。
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【平成21年の出来事】
3月・フリースタイルスキー世界選手権猪苗代大会
8月・衆院選本県小選挙区全てで民主候補が勝利
9月・地裁郡山支部で県内初の裁判員裁判
10月・アクアマリンふくしまが世界で初めてシーラカンスの幼魚を撮影
〔国内〕▼政権交代で鳩山政権誕生▼新型インフルエンザが流行▼日本がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇
〔流行語〕「こども店長」「事業仕分け」「草食男子」
〔ヒット曲〕Perfume『ワンルーム・ディスコ』坂本冬美『また君に恋してる』FUNKY MONKEY BABYS『ヒーロー』
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