【TRY・イノシシ駆除(中)】箱わな作戦、知恵比べ苦闘1カ月

 
斎藤さん(左)の指導を受けながら箱わなの中に餌となる米ぬかをまく記者

 伊達市月舘町で始まったイノシシとの闘い。伊達市鳥獣被害対策実施隊月舘地区隊とイノシシの知恵比べは約1カ月続いていた。(県北支社・石井裕貴)

 隊長の長谷川藤吾(とうご)さん(68)と隊員の斎藤正義さん(65)が設置した箱わなの仕掛けはこうだ。餌となる米ぬかで箱の中に誘い込み、入り込んだイノシシが餌を食べている時に仕掛けに鼻が触れると、侵入口の扉が落ちるという仕組みだ。

 箱わなの中をよく見ると、数頭のイノシシとみられる足跡、そして仕掛け近くで餌を食べた形跡があった。まるでわれわれをあざ笑うかのような行動と食べっぷりだ。長谷川さんが言う「ここのシシは度胸がある」との評価通りだ。

 形跡を見た斎藤さんの鼻息が荒くなった。「あともう少しだ。親子かもしれない」。記者も興奮してきた。斎藤さんらは日々箱わなを見回りし、餌の減り方や足跡などを確認。長期戦を見据え、最前線で闘っている。根気が要るのだ。

 捕獲できる日を願い、仕掛けを準備し直した。警戒心を解くため、土をかぶせて金網を見えなくしたり、獣道にはイノシシが安心して身を隠せるよう竹やぶを残したりした。工夫を凝らして箱わなの外側にも餌をまいて、徐々に箱の中へ誘うようにした。

 吉報を待つため、この場を離れた。その後、斎藤さんに連絡すると、箱わなの扉が閉まって閉じ込めたものの穴を掘って逃げられた形跡があった。アナグマの仕業だという。3週間たったが、それ以外に目立った捕獲情報はない。

 「捕獲をやめるとシシは増え、被害はなくならないんだ」と長谷川さん。農家にとってイノシシは困った存在なのだ。伊達市では毎年約2000頭捕獲されている。昨年は長谷川さんも80頭ほど捕獲したといい、闘いが続いている。

 捕獲できなかったが、どうしてもこの闘いに終止符を打ちたい記者。その様子を見かねた2人はある施設を紹介してくれた。

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 伊達市の鳥獣被害 耕作放棄地の増加に伴い、近年は伊達市の中山間地域の畑で数多くの被害が出ている。農作物に関わる2019年の年間被害額は、市全体で約233万円。このうちイノシシによる被害は約156万円で大半を占める。