【TRY・マウンテンバイクトレイル(上)】飛行機と競走、30歳の大冒険

 
福島空港から離陸しようとする飛行機と並んで走る記者

 秋の訪れを感じる穏やかな昼下がり。記者は飛行機と競走していた。風を切る感覚は久しぶりで何とも気持ちいい。今回トライしたのは、玉川村が8月に始めたレンタル自転車。舗装されていない「オフロード」を走るコースが複数設けられており、電動アシスト機能が付いた「eバイク」で野山を走った。(石川支局長・国井貴宏)

 コース整備などを委託され、マウンテンバイクの競技歴を持つ国分洋平さん(38)=郡山市=に案内してもらった。「少しくらいきつい思いをしないとトライにならない」。そう息巻いて、電動補助なしで乗り始めたが、数分で上り坂に差し掛かり、迷わず補助の度合いを最大まで上げた。

 補助の強弱は、ハンドルに付いたボタンで簡単に上げ下げできる。補助の度合いを上げるほど、坂道でもペダルの重さは平地を走る時と変わらなくなってくる。これなら景色を楽しむ余裕もできそうだ。

 程なくして小高い丘にたどり着くと、思わずため息が漏れた。眼下に広がっていたのは福島空港の滑走路と建物。北西を向けば郡山市の中心部まで見渡すことができた。

 国分さんによると、自転車で滑走路近くを走れる空港は国内では珍しいそうだ。景色に見入っていると、「飛行機が離陸しますね」と国分さん。確かに機体が滑走路へ向かっていた。

 なかなか巡り合えないであろう場面に興奮を抑えきれない。はばかられるような人目もない。飛行機と競走だ。離陸に向け走り始めた飛行機に合わせて全力でペダルを踏む。地面は草で覆われているが、太いタイヤのおかげですいすい進む。

 当たり前だが、あっという間に追い越された。「やっぱり速いな」と飛び立つ機影を見送りながら、笑いが止まらない。自転車をこぐ楽しさと絶景の中で記者は完全に童心に帰っていた。

 興奮したのもつかの間、次に国分さんに導かれた先は山道への入り口だった。木の枝葉が生い茂っていて暗いし、人が並んで歩けないほどの道幅。どうやらここからが本番のようだ。東京五輪で話題になった実況を思い出す。「13歳、真夏の大冒険!」。スリルとは無縁な年頃になってきたと思っていたが、30歳初秋、ちょっとした冒険が始まろうとしていた。

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 玉川村レンタルサイクル eバイクなどを福島空港や道の駅など村内4カ所で貸し出している。料金はeバイクが3時間で2000円、7時間で4000円、その他の自転車が3時間で千円、7時間で2000円。初回は別途料金が必要となるツアーガイドの利用を推奨している。空港を見渡せる空港トレイルは14日前までに予約が必要。問い合わせはひつじ百貨店(電話090・9030・4498)へ。