貫いた「攻めの姿勢」岩渕4位、鬼塚11位 スノボ女子ビッグエア

 
(写真上)女子ビッグエア決勝3回目を終え、各国選手らに声を掛けられて感極まった表情の岩渕麗楽=北京(共同)(写真下)女子ビッグエア決勝でジャンプする鬼塚雅(共同)

 北京冬季五輪第12日の15日、スノーボード女子ビッグエアの本県ゆかりの岩渕麗楽(れいら)(20)=バートン=は2大会連続の4位、鬼塚雅(23)=星野リゾート=は11位だった。

 岩渕と鬼塚は攻めの姿勢を貫いた。表彰台には届かなかったが、4年分の挑戦の軌跡を北京の地に確かに刻んだ。(中国・北京=本社報道部・折笠善昭)

 骨折抱え挑んだ大技「あとちょっとだった」

 歓声がため息に変わった―。3位と5.5ポイント差を追う岩渕が繰り出したのは、実戦で初めて挑む大技だった。「ほんとにあとちょっとだったのに」。着地で乱れ、メダルにあと一歩届かなかった。

 前日の予選最終試技で転倒した際、左手甲を骨折していたことを明かしたのは競技の後のこと。固定して臨んだが、ボードをつかむ「グラブ」すら痛みが走る状態だった。

 痛みをこらえ、2種類の「ダブルコーク1080(斜め軸に縦2回転、横3回転)」を成功、2回目を終え、メダルは射程圏内にあった。「こういう場所でしか挑戦できない。絶対立つ」。最後は、誰も挑戦していない斜め軸に縦3回転する「トリプルアンダーフリップ」で逆転を狙った。

 高校生で挑んだ平昌(ピョンチャン)大会で4位となり、メダルのために4年間技術を磨いてきた。空中で美しく後方に3回宙返りしたが、着地で踏ん張れなかった。メダルは手にできなかったが、果敢な姿勢に拍手が起き、海外選手は挑戦をたたえるかのように岩渕を囲んだ。

 「苦しい中、たくさんの人に支えてもらった。形に残るもので恩返しがしたかった」と涙を浮かべた20歳。その勇姿は人々の目に焼き付いたはずだ。

 こだわった3回転半「諦めない」

 顔の傷は逃げなかった証しだ。鬼塚は3回の試技全てで着地が乱れて前回を下回る11位に終わったが、果敢に大技に挑んだ。「全ての努力はしてきたが、私ができる全てがこれだった」。涙を浮かべながらも気丈に振る舞った。

 熊本県出身で、練習場を求めて5歳から星野リゾートアルツ磐梯(磐梯町)に通った。2017年からはアルツ磐梯の協力で専用練習場「ミヤビパーク」でも活動。女子選手最高難度の逆スタンスで斜め軸に縦2回転、横3回転半の「キャブダブルコーク1260」を実戦で初成功させるなど世界で戦う力を身に付けた。

 決勝1回目。横に3回転半する技の途中で体勢を大きく崩し、激しく転倒。顔などを打った。しかし立ち上がると再び高さ60メートルのジャンプ台へと歩を進めた。「怖かったけど、今まで練習してきた自分がいる。諦めたら駄目だと思った」。2回目もキャブダブルコーク1260。完璧な着地はできなかったが、自らの姿勢を貫いた。

 技にこだわらなければ表彰台にたどり着けたとの思いはあると明かしたが、この技こそ4年間の歩みそのものだ。「(五輪で)『キャブダブルコーク1260』に挑んだことを誇りに思いたい」

 練習支えた会津「よく攻めた」

 「よく攻めた、惜しかった」。決勝の3回目が終わると、鬼塚が練習拠点にしている星野リゾートアルツ磐梯(磐梯町)のスタッフらから、ねぎらいや感謝の言葉が上がった。

 同スキー場で15日に開かれたパブリックビューイング(PV)には、鬼塚と星野リゾート猫魔スキー場(北塩原村)などで練習してきた岩渕らの応援のため、アルツのスタッフやスキー客が集まった。

 両スキー場の総支配人森本剛さん(41)は鬼塚について「1本目から攻めていく姿がかっこよかった。悔いなく全力を出し切ったと思う」とたたえ、サポートしてきた4年間を振り返り「貴重な経験ができて光栄だった」と感謝の言葉を述べた。岩渕についても「五輪でこれほど存在感を示せるトップ選手が、猫魔スキー場から出てきてもらえてうれしい」と健闘をたたえた。

 アルツにある鬼塚の専用練習場「ミヤビパーク」の整備を手掛けたパークビルダー山田雄二さん(49)は「大技にチャレンジしてもらえたことがうれしかった。今後も練習のサポートを続けたい」とねぎらった。

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 バッハ会長から「敬意」の記念品

 負傷を抱えて決勝に出場した岩渕に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が記念品を贈った。

 記念品は五輪モデルの時計で、けがにもかかわらず決勝で最高のパフォーマンスを見せた岩渕に敬意を示す―との理由という。競技を終えた岩渕に関係者を通じて伝達された。岩渕は「見ていてもらえるとは思っていなかった。こういうのをもらえてうれしい」。悔しさから涙を浮かべていたが、思わぬ贈り物を手にすると頬を緩ませた。

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