「最後」の夏、誓う勝利 高校野球福島大会8日開幕

 
(写真上から)井島はチームスローガン「感謝」を胸に最後の夏に挑む、「応援に来てくれる家族らに勝ち進む姿を見せたい」と話す宮城、「悔いなく終えられる夏にしたい」と話す嘉数

 8日に開幕する第105回全国高校野球選手権記念福島大会に向け、県内の球児たちは後輩や家族、母校などへの思いを胸に「最後の夏」に挑もうとしている。

 未来の後輩につなぐ情熱

 「少しでも勝ち進むことで、来春、1年生が入部するきっかけにつなげたい」―。最後の夏に懸ける原町の主将でエース井島誠也(17)の思いは強い。

 現在の部員はマネジャーを除き10人。内訳は3年生4人、2年生が6人、1年生がゼロ。夏の大会後は単独チームとしての存続が危ぶまれる状況だ。「もし『原高』の名前が残らなかったら心残り。後輩たちがかわいそう」。だからこそ、大会が近づくにつれ、投球練習にも自然と熱がこもる。

 今春は勧誘に奔走した。交流サイト(SNS)を駆使したり、野球経験者を事前に把握して昇降口で待ち合わせて勧誘したりと懸命だった。それでも新入部員はゼロだった。井島は「最後の単独チームになるかもしれない。先輩たちの思いに応えるためにも、勝つことが大事」と話す。東京電力福島第1原発事故後は生徒の避難などで部員不足になり、12年は連合チーム「相双福島」として出場したが、13年以降は単独チームで伝統校の名を継承してきた。

 遠藤優太監督(34)は「新入部員が入らなかった時は全員が落ち込んだが、今は少人数ならではの豊富な経験値を生かして試合に臨む空気ができている」と期待する。少人数を補うために、女子マネジャーがノックするなどして結束力を高めてきた。「地域の人たちや、指導してくれる先生たちのおかげで今がある」と井島。感謝を合言葉に20年以来の夏1勝を目指す。

 古里・沖縄に雄姿を

 沖縄出身の球児2人も最後の夏に挑む。会津北嶺のエース宮城智大(18)と一塁手嘉数(かかず)優人(17)は、沖縄を離れて積み重ねてきた日々を自信に変え、目標とする初優勝に向けて闘志を燃やす。

 創部6年目の野球部で、2人とも1年から中心選手として活躍してきた。下宿生活を送り、校舎から約9キロ離れた会津若松市の河東球場に自転車で通って練習に励んできた。その成果が実を結ぼうとしている。今年は創部後初めて春季県大会に出場し、1勝を挙げた。

 遠く離れた会津への進学を選んだのは、中学3年の時。高校野球に向けて地元で硬式球の練習会に参加した際、見学していた同校関係者に「新しいチームで一緒に野球しよう」と声をかけられたのがきっかけだ。

 宮城は2018年夏の福島大会での日大東北戦の大敗を知り「チームを強くしたい」と入学を決意。嘉数も野球に打ち込みながら、工業系の資格を取得できることから家族と相談して進学を決めた。

 当初は雪の多さに驚いたという2人。冬場は雪上で走り込んで足腰を鍛えて力を蓄えてきた。「1年生の時は雪が降ると喜んだ時もあったが、慣れるとつらかった」と振り返る。最後の夏に向け「悔いなく終えられる夏にしたい」と嘉数。宮城は「今まで遠くから支えてくれた家族や地元の先輩が応援に来てくれる。勝ち進む姿を見せたい」と力を込める。

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