学校新聞で処理水特集 滋賀・彦根東高、毎春発行「正しく関心を」

 
(写真上)彦根東高新聞部が発行した学校新聞の特集号「福島をつなぐ」(写真下)売り上げの一部を本県に寄付するため文化祭でグッズ販売に取り組む彦根東高新聞部の生徒たち。特集号の発行以外でも震災復興に思いを寄せて活動している=22日、滋賀県彦根市

 正しい知識を持って、これからの福島に関心を持ってほしい―。滋賀県の彦根東高新聞部はその思いから、毎年春に学校新聞の特集号「福島をつなぐ」を発行している。今年はテーマの一つに、東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出計画を取り上げた。部員たちは東日本大震災から11年が過ぎた福島の今を自分たちの言葉で伝えようと、活動を続けている。

 特集号の1面で報じたのは、生徒を対象にした処理水の認識調査。生徒602人にアンケートを取り、福島への関心や処理水に関する四つの問いを投げかけた。

 海洋放出計画の認知度は「知っていた」が34%で「知らなかった」が65%。計画の賛否は「賛成」が50%、「反対」が18%、「分からない」が31%だった。

 反対と答えた人からは「海に生息する生物や漁業者への影響が心配」、分からないとした人からは「海洋放出のメリットとデメリットが分からない」などの意見が寄せられたという。

 特集号を手がけた福島取材班チーフの橋本萌さん(2年)は「むやみに恐れている感じがあって、地元に反対の声がある理由も含めてちゃんと知ってもらい、正しく関心を持ってほしいと思った」と企画した理由を語る。

 「震災から10年を区切りに震災関連のニュースが減り、風化が進んでいる」との危機感と、以前から関心があった風評被害の現状を知りたいとの思いから、今回の調査報道のテーマを設定したという。

 特集号の作成には福島取材班を中心に約20人が携わった。新型コロナウイルスの影響でリモート中心に取材活動を展開し、全6ページにわたる力作を完成させた。調査報道のほかに、相馬高や安積黎明高、白河高の生徒や県風評・風化戦略室の職員、福島中央テレビのキャスターらを取材した記事も掲載した。

 薄れつつある震災への関心や、福島が抱える課題の複雑さ、「前に進んでいる姿を見てほしい」という県民の声など、さまざまな角度から本県の今を発信している。

 震災があった2011年から毎年特集号を発行している新聞部。先輩の思いを引き継ぎ、取材班を率いた橋本さんは「自分たちで取材してみて、福島のニュースを受動的に見るだけでは分からない部分が多いと感じた」と振り返り、「私たちにしか伝えられないこともある。震災の記憶がない人が増える中で、進み続ける福島を伝えていきたい」と誓う。