最初の1匹...再起へ一歩 南相馬産サケ、鹿島沖で小型定置網漁

 
震災後初めて復活した小型定置網漁で取れたサケを手にする船長鎌田さん(左)と、乗組員の長男侑馬さん=24日、南相馬市鹿島区の真野川漁港

 東日本大震災後途絶えていた南相馬市鹿島区沿岸での小型定置網漁が24日、12年ぶりに復活した。漁獲のメインとなるサケ1匹が網にかかり、真野川漁港(同市鹿島区)に引き揚げられた。豊漁とはならなかったが、震災後初めて港に姿を現した1匹の「南相馬産サケ」に、漁師たちが喜びの輪を広げ、港の活気を取り戻す一歩となった。

 「うぉー、いた!」。午前7時ごろ、漁船に水揚げされたスズキやヒラメに交じり、サケの姿があった。「何匹いた?」「1匹だ」。船長の鎌田豊孝さん(46)=同市鹿島区=は「1匹でも姿を見られてほっとした」と胸をなで下ろした。

 サケは同市鹿島区の沖合約500メートルで取れた約2.7キロの雄。本県での漁は、毎回1匹は放射性物質のモニタリング検査をしなければならず、検体とするため出荷は見送った。漁獲記録に残らない「幻の1匹」となった。

 震災前、定置網漁は、真野川漁港の漁師の重要な収入源だった。しかし、震災で漁師2人が犠牲となったほか、網も津波で全て流失、漁が途絶えていた。漁を復活させようと、相馬双葉漁協が船や漁具を新たに準備。船長だった父を津波で亡くした鎌田さん、船頭の佐々木真一さん(48)、鎌田さんの長男侑馬さん(22)ら6人で船出した。

 侑馬さんは定置網漁は初めての経験。中学卒業と同時に漁師となり、鎌田さんの船で修業している。「父の後を継ぐため、勉強を重ねたい」と意欲を示した。復活までの12年で、サケの全国的な不漁も進んだ。佐々木さんは「この広い海なら、1匹いるだけでも可能性はある」と前向きだった。